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第3章-14

サムライ国へ出発する数日前。

帝国の支配から解放されたルニールでは、国を挙げての祭典が催されることになった。


アスナ

「何でも、国王様直々に、私たちを招待してくれるみたい」


カイ

「え、国王なんていたのかよ!」


エリス

「行方不明になっていたと聞きましたが・・・」


アスナ

「まあ大方、ずっと逃げ回ってたんでしょうけど」

「国が取り戻されたら、急にこんな感じなのね」


カイ

「ふーん」

「まあいいか!」

「面白そうだし、参加してみようぜ!」

「うまいもんいっぱい食べよう!」


エリス「楽しみですわね!」


そして祭典当日の朝。

城下町での式典の数時間前・・・


カイ

「なんでそんな格好してんだよ…」

いつもと違う、青と白のドレスに身を包んだアスナの、大きく開いた背中を見て、カイがたじろぐ。


アスナ

「おはよ、カイ」

「式典用よ。戦闘服で行けっていうの?」


振り向いた瞬間。


カイ、固まる。

いつもと違う、”大人のアスナ”がまぶしい光を放って目に飛び込んでくる。


カイの心の声


(なんだよそれ…)

(いつもと違う…)


(…なんで、こんな…)


ドキ、と胸の音が大きくなるのを、

カイはありありと感じた。


アスナ

「なによ。変?」


カイ

「べ、別に!」


完全に挙動不審だったが、何とか平静を装うカイだった。


アスナ

「?」

---


式典中。


エリスはもともとルニールの大きな屋敷の主だった。

知り合いも多いのか、様々な大人と会話をしている。


知らない貴族の男がアスナに話しかける。


貴族

「お美しい。ぜひ今度――」


カイ

「……」


手が無意識に剣の鞘に触れる。


アスナ

「カイ?」


カイ

「……なんでもねぇ」

(……なんだよこれ……)


ーーー

帰り道。


カイは、”英雄”として貴族たちから質問攻めにあい、辟易していた。


カイ

「あー疲れた・・・」

(アスナ・・・)

(どこ行ったんだろうな)


アスナ

「夜風が気持ちいいわね」


カイ

「アスナ!?」

「行かなくていいのか?」


アスナ

「行くってどこに?」


カイ

「いや・・・」

「さっき貴族に誘われてただろ?」


アスナ

「あー」

「もうたくさん誘われて大変だったわよ!疲れたー」

「貴族なんて堅苦しい割りに話してて面白くないし!」

「ま、私にはしょぼい貴族とかじゃなくて、どこかの王子様くらいしか見合わないってことね!」

アスナはほっとする様子のカイをよそに笑った。


アスナ

「って何、あんた気にしてたの?」


カイ

「…うるせぇ」

「してねえよ!」


アスナ

「?」


カイ

「……あんまり、そういう格好すんな」


アスナ

「え?」


カイ

「…目立つから」


アスナはにやりと笑った。


アスナ

「ふーん?」


ちょっと近づく。


アスナ

「ドキドキした?」


カイ

「なっ・・・!」

「してねぇよ!!」


顔が熱くなる。

それも急速に。


アスナは、そんな様子のカイを見て、

つん、と軽くカイの鼻をこずいた。


アスナ

「安心しなさいよ」


カイ

「え?」


アスナ

「お姉ちゃんはどこにもいかないから!」


カイ

「なんだよそれ...」


アスナ

「あ、安心してたわね今!」

「やっぱりお姉ちゃんが取られちゃうのが嫌だったんだー?」


カイ

「そんなんじゃねえっての!」

「ほら、帰るぞ」


アスナ

「はいはーい」


二人並んで歩いていく。

街灯の下で、2人の影が重なった。


ーーー


サムライ国へ出発の朝


サムライ国の使者がカイたちを迎えに来る少し前・・・


カイとアスナは、シキのお墓に立ち寄った。


カイ

「聞いてくれよシキ」

「おれはこの国の英雄って呼ばれてんだぜ!」

「・・・」

「あの日から・・・少しは強くなれたのかな・・・」

カイはそっと空を見上げて息を吸った。


カイ

「とにかく、またこの戦いも生き残れたよ」

「これからはこの国の外に行くからさ」

「あんまここにも来れないけど」

「ちゃんと生きて帰ってきてやるからな!」

「だから・・・安心して眠っててくれよな」


ふと横を見ると、また目を閉じて念じているアスナがいた。


カイ

「またやってる」

「何をシキにお願いしたんだよ?」


アスナ

「あ、ごめん」


カイ

「内緒はなしだぜ!」

「なんてお願いしたんだよー!」

気になって前のめりになるカイ。


アスナ

「そうね・・・」

「教えてあげようか?」


カイ

「うん!うん!」


アスナはそっと笑った。


アスナ

「カイの身長がぐーんって伸びて、ちゃんとお子ちゃま卒業できますようにって!」


カイ

「ってなんだそれ!」

「このやろー!」


アスナ

「あはは!」


カイ

「ったく・・・」

「ほら、行くぞ」


歩き出すカイの後ろ姿を見ながら、アスナは心の中でそっと呟いた。


アスナ

(シキ・・・)

(これからも・・・)

(カイのこと・・・ちゃんと守ってあげてよね・・・)

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