第3章-5
エリカが顔を出すと、村人たちが自警団を訪れていた。
村人
「昨日、この自警団がゲルグと戦ったって聞いてきたんだ・・・」
カイ
「おう」
「おれが追い払ったぜ!」
「まあ・・・追い払っただけだけど・・・」
村人
「そうか・・・」
村人の一人が、何やら考えた後、言葉を絞り出した。
村人
「昨日、隣の村が襲われた・・・」
「子供は全員連れていかれ・・・」
「用のない村人は皆殺しだ・・・」
「次はおれたちがやられる・・・」
悲痛な表情で、その村人が話した。
村人
「おれたちは・・・」
「このまま殺されるくらいなら・・・」
「あんたたちと一緒に戦う!」
強い覚悟を持った目でカイ達を見た。
エリカ
「でも・・・」
「よいのですか?」
「危険な戦いにー」
村人
「それでもいい!」
村人は必死に叫んだ。
村人
「もし生かされても、おれ達はどうせあいつらに奪われ続けるだけ・・・」
「そんな・・・誇りも何もない命なんて・・・死んでるのと同じだ・・・」
「おれたちは・・・死んでまで生きたいとは思わない!!」
エリカ
「・・・」
エリカはその村人たちの覚悟を肌で感じた。
アスナはその様子を見て”あること”を思いつく。
そしてその村人に尋ねる。
アスナ
「あの・・・」
「村に武器などの物資や、戦える方はどれくらいいるんですか?」
村人
「武器は・・・本当に質素な剣とか槍でよければそれなりに・・・」
「戦いには・・・正直慣れてるやつはほとんどいないな・・・」
「力自慢の男はそこそこいるってくらいだ」
「近隣の村々に声をかけて回ることはできるが・・・」
アスナは何かを確信した表情で言った。
アスナ
「ありがとうございます」
カイ
「どうするアスナ」
エリス
「さすがに戦えるのが私達だけでは、城を落とすだなんて・・・」
アスナ
「・・・」
「・・・どうにかなるかもしれない」
カイ
「え!」
エリス
「すごいですわ!」
アスナ
「ただ・・・」
エリス
「?」
カイ
「ただ…何だよ?」
アスナはエリカや村人をそっと見て言った。
「私たちと・・・」
「死ぬ覚悟は・・・ありますか・・・?」
ーーー
アスナが作戦を話す。
簡素な作戦室。
机の上には、手書きの砦の見取り図。
静かな緊張。
エリカ
「……本当に・・・」
「やるのですか...?」
低い声で問いかける。視線はカイたち3人に向いている。
アスナ
「・・・」
「勝つなら・・・」
「やるしかないです」
アスナは真剣な目で、地図を指でなぞる。
アスナ
「正面から攻めれば、確実に消耗します」
「相手は地の利も、数もある」
エリカ
「だからと言って、戦力を分けるのは危険なのでは...?」
アスナは顔を上げる。
アスナ
「戦力で負けているからこそ・・・」
「単純な戦力の削り合いでは勝てない・・・」
「戦力がないから、分けるしかないんです」
一拍。
アスナ
「自警団、そして村人の皆さんには正面から攻めてもらう」
「敵兵を引きつける“囮”として」
空気が一気に張り詰める。
団員の一人
「……囮?」
辺りの空気が、確かにざわついた。
エリカ
「つまり、私たちに死ねと・・・?」
少しの沈黙。
アスナは目を逸らさない。
アスナ
「死なせない」
「ただ・・・“勝つための動き”をしてもらいます」
アスナ、地図の裏手を指す。
アスナ
「敵の本体はここ」
「砦の奥」
「裏の補給用の小道から・・・カイ・エリスと私の最少人数で潜入」
「そこからこの砦の奥の”親玉”を直接叩き込めば、一気に崩せる」
エリカ
「その間、私たちは敵の注意を引きつけるわけですね」
エリス
「……そして、私たちがゲルグと幹部を担当するわけですわね・・・」
アスナ
「そう」
「私たちがいるから、ゲルグ達”親玉”は城の正面から攻める自警団・村人に構う余裕はない」
「そして、私たちが親玉を相手にしている間は、こちらに他の兵が集まらないよう」
「皆さんは”城を攻めているフリ”をし続けてください」
アスナは村人たちに声をかける。
アスナ
「戦えなくてもいい」
「ただ武器を持って、逃げ回って・・・」
「時間を稼いでください」
「私たちが、ゲルグたちを倒すまで」
強い目で、アスナは即答した。
エリカは息を飲んだ。そして小さく話す。
エリカ
「確かに合理的には見えます...」
一瞬間を置いて、慎重に言葉を発するエリカ。
エリカ
「“成功すれば”...ですが...」
(カイ達がもしゲルグを打ち取れなかったら・・・)
(自警団も村人の皆さんも・・・)
エリカはごくり、と息を飲んだ。
しかし覚悟を込めた目で、カイが口を開く。
カイ
「俺たちが勝つ」
「信じてくれ」
沈黙。
その言葉、そしてカイの目が物語る“覚悟”が空気を変える。
エリス
「……正直、怖いですわ」
全員の視線が向く。
エリス
「でも」
エリスは少し笑った。
エリス
「この作戦、嫌いじゃありませんわ」
「だって、“守られる戦い”じゃないもの」
アスナは少しだけ目を細める。
カイもエリスを見て、軽く頷く。
エリカ
「……」
エリカは机に拳を置く。
エリカ
「分かりました」
「その作戦に...乗りましょう」
団員たちがどよめく。
エリカ
「ただし条件があります」
エリカはカイを見る。
エリカ
「必ず...終わらせてください」
カイ
「ああ」
「任せろ!」
エリカはふっと小さく笑った。
他の団員も、覚悟を決めた。
エリカ
「そうとなれば...」
「じゃあ私たちは“最高の囮”をやり切りましょう!」
「皆さん、ジンさんの敵討ちです」
「我々の底力を見せてやりましょう!」
他の団員
「おおおおおお!!」
村人
「おれ達もだ!」
「見てろゲルグ!」
「すげぇ囮を見せてやるぜ!」
「おおおおおお!!」
カイ
「みんな、頼んだぜ!」
エリカ
「託しましたよ・・・皆さん」
「この戦いを。そして・・・」
「この国の未来を・・・」
カイ、ほんの少しだけ目を伏せる。
カイ
「……ああ!!」
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