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第2章-2

エリス

「……お客様、ですの?」


あっけにとられていたカイが、一瞬呼吸することを思い出す。

カイ

「あ、ああ……」

「おれは、カイ」


カイ

「こっちは……アスナだ」


アスナも何とか呼吸を思い出す。

「よ、よろしく」


エリスは、少し首を傾げ――

にこりと微笑んだ。


エリス

「まあ……」

「ようこそ、いらっしゃいました」

「エリスと申します」

ペコリ、と丁寧に頭を下げる。

一つ一つのしぐさが、この小さな村の少女には似つかわしくない”高潔さ”だった。


エリス

「どういうご用件でいらっしゃいましたの?」


カイ

「おれたち、旅をしてるんだ」

「帝国に虐げられてるこの辺の村を救っていってるんだけど、それでこの村に立ち寄ったってところなんだ」


アスナ

「ごめんなさい、急に尋ねたりして」

「村で一番目立つ建物だから、何かこの村のことが分かるかと思って」


エリス

「そうなんですのね」

「といっても・・・」

エリスの表情が曇る。


エリス

「ここは、特になにもない村ですのよ?」

「あまり、長いをされるところではないかと思いますわ・・・」


カイとアスナは、この静かな少女の違和感に気づく


小さい男の子がエリスのそばに寄ってきて、腕をつかんだ

「おねーちゃん!」

「何やってるの?」

「こっち来て遊ぼうよー!」


エリス

「ふふ」

「分かったわ。ちょっと待ってて」

年相応の柔らかい笑顔を見せる


エリス

「お客様」

「申し訳ございません。ただ、本当にこの村には・・・」

「長居されないことをおすすめしますわ」

愁いを込めた表情で言い放つエリス。

「では、失礼いたしますわね」


カイ「あっ・・・」

アスナ「・・・」(あの子・・・)

ーーー

カイは先ほどの出来事を振り返る

カイ

「何だったんだろうな?悪い子には見えなかったけど・・・」


カイの人を見る直感はいつも当たるのをアスナは知っている。

それはそうとして鼻の下がデレデレなのは気になるが。


アスナはカイのほっぺたをつんつんと軽く突いた。


カイ

「?」

「なんだよ」


アスナはあえてカイの声が聞こえてないふりをした。

アスナ

「それにしても・・・」

「何かありそうね・・・」


先ほどのエリスとの問答を様子を見ていた中年の男性(恐らくこの屋敷で働いている人だろう)が、

二人に気づき、小声で話しかけてくる。


男性

「旅の方ですかな……」

「エリス様とお話されていましたよね?」


アスナ

「ええ」

「ただ、あまり相手にされなかったというか・・・」


男性

「申し訳ございませんでした」

「決して悪気があってエリス様もあのようなことをおっしゃられたのではないのです・・・」


カイ「やっぱり!だと思ったんだよな」

アスナ「もしよければ、この村について教えていただけないでしょうか?」


男性は少しうつむいて、そして話し出す。

「この村は、昔は……」

「それなりに大きくて……」

「ちょっとした兵も、いたんですが……」


男性は、さらに視線を落とす。

「ご存知の通り、ここ数年で帝国の支配が一気に激化し・・・」

「……エリスのお父上が村を守るため、自前の兵で村を封鎖したんです」


男性

「しかし2年前……」

「帝国の襲撃を受けて……」

「そのお父上が……亡くなりましてな……」


カイ・アスナ「!?」

ーーー

回想


捉えられ、帝国将バルガンに踏みつけられるエリスの父


帝国兵

「こいつは帝国に反逆した」

「似たようなやつが現れないよう・・・」

「こいつは見せしめに、今ここで殺すことにする!」

「ブハハハハ!!」


エリス

「お父様!!」


エリス父

「エリス・・・」


エリス父

「何があっても・・・強く生きなさい」

「いつか、お前のことを理解し、守ってくれる仲間がきっとできる」

「それまで、希望を失わないで、生きるんだ」


エリス「待って・・・お父様・・・」


エリス父

「私の・・・娘に生まれてくれて・・・」「ありがとう」

にっこり笑う


エリス

「お父様!」

「いやっ・・・いやああああああああ!!」


ザクッ

血しぶきがあがる

ーーー


アスナ

「……」


村人

「それから……」

「帝国の連中の搾取が、ひどくなって……」

「元々早くにお母様を亡くされていたエリス様も・・・」

「あの件以来、人とのつながりをどこか恐れているようで・・・」


カイ「・・・」


村人

「……それでも……」

「あの子が……」

「この村の、希望なんです」


その言葉に、

カイは、再び少女を見る。


子供たちに囲まれ、

無邪気に笑う、その姿を。


――希望。


カイは、ずいぶん久しぶりにその言葉を聞いた気がした。

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