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第2章-1

それから、二人は――

いくつもの村を巡った。


略奪に荒らされた家々。

干上がった畑。

泣き声の絶えない夜。


救えた命も、確かにあった。

だが――


どの村も、

「救われた」と言えるほどには、変わらなかった。


焼け残った民家の前で、

カイは小さく舌打ちをする。


カイ

「……しかしさ……」

「元いた地区の外に出てみたけど……」

「どこも、ひでえもんだな……」


アスナは、遠くを見つめたまま、静かに頷く。


アスナ

「賊による略奪……」

「飢餓……」

「どこの村も、限界よ……」


風に舞う灰が、二人の間を通り抜けた。


カイ

「なあ……」

「思ったんだけどさ」


アスナ

「……なに?」


カイ

「まずさ……」

「大きい村を、ひとつ立て直すのはどうだ?」


アスナ

「……拠点に、するってこと?」


カイ

「そうだ」

「そこを中心にすりゃ……」

「困ってる人たちも、逃げてくる場所ができる」


アスナは、少し考え込む。


アスナ

「……確かに……」

「このまま一つずつ救っていくだけじゃ……」

「帝国に、近づいてる気はしないわね……」


アスナ

「……まずは、人を救う」

「その土台を、作りましょう」


カイ

「ああ」


二人は、進路を決めた。


辿り着いたのは、

周囲よりも一回り大きな村だった。

ーーー


山間の、風当たりのよい場所に作られた村――

デント。


村の傍らには、

奇妙に中央をくり抜かれたような巨岩がそびえている。


木造の家々はまだ立ち、

畑にも、人の気配が残っていた。


カイとアスナは、

まず情報を集めるため、

村で一番大きな屋敷を訪れることにした。


カイ

「すげー!」

「こんなでかい屋敷、見たことねえぞ!」


アスナ

「ほんとね……」

「どんな人が住んでるのかしら」


屋敷の中庭に足を踏み入れた、その瞬間。

二人の目の前に、予想外の光景が広がっていた。


そこには――

穏やかな、人だかり。


「いたいよぉ……」


子供の声。


その中心で、

白い光が、柔らかく灯っている。


少女が膝をつき、

小さな手を、そっと重ねていた。


「……大丈夫ですわ」

「すぐ、痛くなくなります」


淡い光が消える。


子供は目を瞬かせ、

次の瞬間、満面の笑みを浮かべた。


「ほんとだ!」

「すごーい!」


「ふふ……よかった」


別の子供が、少女の腕を引っ張る。


「ねえねえ!」

「おにごっこしよ!」


「まあ……」

「仕方ありませんわね」


カイ

「あ、あの子……」

「この屋敷の人なのかな?」

「おれたちと、あんまり変わらない年に見えるけど」


アスナ

「そうね……」

「ひとまず、話を聞いてみましょう」


アスナ

「あの――」


エリス

「あら、お客様?」


振り向いた――

その瞬間。


カイとアスナの時間が、

ぴたりと止まった。



真っ白で透き通るような肌。


サイドで結ばれた、

陽光を溶かしたようなブロンドの髪。


すらりと伸びた手足に、

風に揺れる純白のワンピース。


無垢な表情に、

淡い赤の唇。


そして――

何よりも印象的な、

大きく、澄んだ青い瞳。


それは、

この荒れた世界にはあまりにも不釣り合いな、

**“静けさ”**だった。


カイ

「……て……」

「……天使……?」


アスナ

「......(言葉が出ない)!」

「……おにんぎょう……?」


エリス

「……?」


小さく、首を傾げる。


その仕草さえ、

まるで計算されたかのように――

優しかった。


カイとアスナに先ほどまで聞こえていた風の音は、

いつの間にか、消えていた。


世界が、息を止めたようだった。

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