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04あーかわいそ


 『Sランク目前の慢心か?”太陽の戦乙女”依頼失敗』


 朝刊の一面に、やけに大きな見出しが躍っていた。

 紙面をめくる。

 インクの匂いと、安っぽい煽り文句。

 本当に――”いい趣味してる”。


 記事の内容は、簡単に言えばこうだ。


 期待の新鋭パーティ『太陽の戦乙女』が、アイアンゴーレム討伐に失敗した。

 原因はリーダー、アンジェラの判断ミス。

 そして――

 彼女の“慢心”。


 「……ふうん」


 僕は鼻で笑った。

 まぁ、書いてあること自体は、間違っていない。

 でも、本質的には――


 「そこじゃないんだけどな」


 ベッドに寝転がりながら、紙面をひらひらと揺らす。

 アンジェラは強い。

 それは事実だ。

 Aランクとしては過剰なくらいに。

 ただし。


 (それは支えがあって、初めて成り立ってた強さだった)


 僕の強化魔法。

 物質の強化。

 あの剣を“成立させていたもの”。

 それがなくなれば、どうなるか。


 結果は――まあ、見ての通りだ。


 「やれやれ……」


 わざとらしく肩をすくめてみせる。

 誰も見ていない部屋で。

 記事を読み終え、適当に放り投げる。


 「――浮遊する眼(レビテーション・アイ)


 目を閉じる。

 意識を、外へ。

 遠くへ。


 視界が浮かび上がる。

 見慣れた場所。

 ギルドの一角。


 そこに――いた。


 アンジェラが、椅子に座っている。

 俯いたまま、動かない。

 その周りには、三人。


 ライカ、ビルナ、エリザ。


 何かを話しかけているけど――

 うまくいっていない。

 空気が、重い。


 (ああ)


 思わず、声が漏れる。


 「……あー、かわいそ」


 ぽつり。

 独り言。


 「……あー、かわいそ」


 繰り返す。

 同じ言葉を。

 少しずつ、音を転がすみたいに。


 「……あー、かわいいなぁ」


 その瞬間、

 胸の奥が、じわっと熱くなった。

 俯いている。

 あのアンジェラが。


 いつも偉そうで、強気で、うるさくて――


 “絶対に折れなさそうだった”彼女が。


 今は、何も言えずにいる。


 (いいね)


 心の奥が、満たされていく。


 (すごく、いい)


 悔しそうに唇を噛んでいる。

 拳を握りしめている。

 でも、顔は上げられない。


 (ああ……)


 ぞくり、と背筋が震えた。


 (そうだよ、これだよ)


 これが見たかったんだ。


 「ふふ……」


 喉の奥で、笑いがこぼれる。

 強くて勝気なアンジェラもいい。


 でも――


 (壊れかけてる方が、ずっといいよ)


 ベッドの上で、ゆっくりと寝返りを打つ。

 視線は、ずっと“あっち”のままだが。


 ライカが何か言っている。

 ビルナが困った顔をしている。

 エリザが優しく声をかけている。


 でも、アンジェラの反応は薄い。


 (誰の言葉も届かない)


 その事実が、

 妙に心地よかった。


 「大丈夫だよ」


 誰に向けるでもなく、呟く。


 「ちゃんと見てるからね」


 まるで、励ますみたいに。

 でも、その実――


 (まだ、足りない)


 こんなのは、序の口だ。

 もっと。

 もっと落ちて。

 もっと壊れて。

 もっと無様に。

 そうしたら、きっと――


 (もっと、かわいくなる)


 「ふふふふ……」


 指先が、無意識に動く。

 空中をなぞるように。

 まるで、

 触れているみたいに。


 「……もっと」


 小さく、囁く。


 「嗚呼、可哀い(かわいい)なぁ」

あーかわいそ

あーかわいそ


言わせたかっただけ説、あります。

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