第81話 可決寸前
議場は、これまでにない緊張に包まれていた。
凍結案。
一時停止案。
そして維持案。
三案同時審議。
傍聴席は満席。
広場には中継を見守る市民。
最初に発言したのは、凍結派の筆頭議員だった。
「内部改竄未遂が起きた」
「市民が傷ついている」
「制度は一度、止めるべきだ」
拍手が起こる。
次に、維持派。
「未遂は検知された」
「公表もされた」
「透明性は機能している」
こちらにも拍手。
そして。
エリシアが呼ばれる。
議場の視線が一斉に向く。
「私は、限定的一時停止を提案します」
ざわめき。
「凍結は理念の放棄です」
「維持は設計の過信です」
静まり返る議場。
「公開は正しい」
「だが、正しさだけでは守れない」
言葉は落ち着いている。
「失敗履歴は必要です」
「だが、文脈なき拡散は防ぐべきです」
「三十日で設計を修正します」
「止めるのではなく、整える」
視線が議員たちを巡る。
王子が立ち上がる。
「私は維持を主張する」
はっきりと。
「揺らぎは制度の一部だ」
「ここで止めれば、公開は弱い制度だと示す」
議場が再びざわめく。
票読みが始まる。
凍結派が優勢。
僅差だ。
可決ラインまで、あと二票。
ヴァルドの顔が強張る。
アルノーが小声で呟く。
「まずい」
最後の発言者として、アーデルが証言台に立つ。
議場が静まる。
「私は凍結を支持します」
空気が凍る。
「制度は一度立ち止まるべきだ」
凍結派が勢いづく。
だが。
「だが、完全凍結は危険だ」
その一言で、空気が揺れる。
「公開は腐敗を防いできた」
「それも事実だ」
「私は一時停止案を支持する」
ざわめきが走る。
「止めるのではなく、直す」
「傷を無視せず、理念も捨てない」
議員たちの視線が動く。
票は、再計算される。
凍結案は否決。
維持案も届かない。
一時停止案が、僅差で可決された。
議場に、深い息が流れる。
完全な勝利ではない。
だが、崩壊もしていない。
エリシアは静かに目を閉じる。
三十日。
その間に、制度を進化させなければならない。
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