第79話 揺らぐ基盤
改竄未遂の公表は、即座に広がった。
『公開枠組み内部で改竄未遂』
その見出しだけが独り歩きする。
本文には、未遂であること、
即時検知されたこと、
履歴は保全されたことが記されている。
だが、人々が読むのは見出しだ。
広場の声はさらに強まる。
「内部すら守れない制度だ!」
「透明性は幻想だ!」
議会は緊急討議に入った。
「これが証拠だ」
凍結派議員が立ち上がる。
「制度は破られた」
「未遂です」
反対派が反論する。
「検知機能が機能した証明だ」
「だが、試みはあった!」
言葉がぶつかる。
レオンハルトは沈黙を保つ。
ハルフェン。
エリシアは、公開記録板のアクセス数を見ている。
急増。
怒りと不安が混ざる波。
「世論は凍結に傾いています」
ヴァルドが静かに告げる。
「内部犯の動機も報じられました」
「父親の件が、共感を呼んでいます」
レナは拘束中だが、供述は隠していない。
彼女は制度を憎んでいない。
傷ついているだけだ。
「……制度は、正しかったでしょうか」
エリシアの声は、初めて揺れた。
ヴァルドは答えられない。
正しさと、痛み。
両立は難しい。
扉が開く。
レオンハルトが入室する。
「採決は延期になった」
「世論が不安定すぎる」
短い報告。
「延期は時間を稼ぐ」
「だが、不信も広がる」
エリシアは立ち上がる。
「私は停止を提案します」
王子の目が、はっきりと動く。
「まだ言うか」
「改竄未遂が起きた」
「内部に亀裂がある」
「そのまま続ければ、さらに壊れます」
レオンハルトは、ゆっくりと首を振る。
「止めれば、壊れたと認める」
「壊れていないと?」
視線が交差する。
「制度は揺れている」
「だが、機能している」
王子の声は静かだ。
「未遂を検知した」
「公表した」
「それが透明性だ」
エリシアは言葉を失う。
確かに、その通りだ。
だが、広場の声は止まらない。
「……私は、守れていません」
小さな呟き。
制度も、人も。
レオンハルトは一歩近づく。
「守るとは、何だ」
答えはすぐに出ない。
窓の外、夜の広場に灯りが揺れる。
制度は立っている。
だが、足元は揺らいでいる。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




