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婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


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第78話 内部の亀裂

 採決当日の朝。


 公開記録板に、異常が検知された。


「……更新ログが不自然です」


 ヴァルドが画面を拡大する。


 本来、改変不可能な履歴欄に、

 一瞬だけ“修正痕”が表示された。


 すぐに元に戻っている。


「改竄未遂です」


 アルノーの声が低くなる。


 会合室の空気が張り詰める。


「外部侵入ではありません」


 ヴァルドが続ける。


「内部認証を通っています」


 沈黙。


 エリシアは、ゆっくりとログを追う。


 使用端末。

 接続経路。

 認証キー。


「……枠組み内部の職員です」


 名が表示される。


 レナ・クロイツ。


 若手官僚。

 動的評価指数導入時から携わっていた。


「拘束は?」


「既に」


 別室。


 レナは抵抗しなかった。


 椅子に座り、静かに言う。


「完全には消せませんでした」


「何を」


 エリシアが問う。


「失敗履歴です」


 まっすぐな視線。


「父は公開で失職しました」


 淡々とした声。


「改善していました」


「再起もしていました」


「でも、“最初の失敗”だけが広まった」


 その言葉は、アーデルと重なる。


「公開は正確です」


 レナは続ける。


「でも、人生は正確さだけで救われません」


 エリシアは黙って聞く。


「私は制度を壊したかったわけではありません」


「止めたかった」


「少しだけ」


 沈黙。


 怒りはない。


 理解がある。


「改竄は制度の死です」


 エリシアは静かに言う。


「分かっています」


 レナの目に、涙はない。


「だから失敗しました」


 扉の外では、議会の鐘が鳴り始めている。


 採決の時間が迫る。


 ヴァルドが小声で言う。


「改竄未遂が公になれば、凍結派が勢いづきます」


 隠せば、不正になる。


 公開すれば、制度への信頼は揺らぐ。


 エリシアは、目を閉じる。


 公開は嘘をつかない。


 だが、人は揺らぐ。


「公表します」


 短い言葉。


「内部からの改竄未遂があったと」


 ヴァルドが息を呑む。


「自ら傷を晒すのですか」


「公開は、選択です」


 エリシアは言う。


「不都合も含めて」


 廊下の向こうで、議会のざわめきが強まる。


 制度は、今まさに試されている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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