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婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


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第77話 止めるという選択

 会合室の扉が閉まる。


 中にいるのは、エリシアとレオンハルト、そして数名の中枢メンバーだけだ。


「凍結案は明日、採決にかけられる」


 王子は前置きをせずに言った。


「世論は揺れている。五分だ」


 エリシアは静かに頷く。


「広場の声は正当です」


「だから止めるのか」


 即座に返ってきた問いは、鋭い。


 沈黙が落ちる。


「公開は人を傷つけている」


 エリシアは言う。


「文脈なき拡散が、再起を妨げている」


「それは公開の責任か」


「設計の責任です」


 レオンハルトの視線が揺れる。


「止めれば、何が戻るか分かっているな」


「隠蔽」


「恣意的判断」


「裏取引」


 エリシアは一つずつ口にする。


「分かっています」


「ならばなぜ迷う」


 その問いに、わずかな感情が滲む。


 第一章以来の、真正面からの衝突だった。


「制度は守るためにある」


 エリシアは低く言う。


「だが、守られる側が傷ついているなら」


「止めることも守ることだ」


 レオンハルトは机に手を置く。


「止めるのは簡単だ」


「再開は難しい」


 会合室の空気が張り詰める。


「私は公開を守ると決めた」


 王子の声は落ち着いている。


「あなたもそうだったはずだ」


 エリシアは目を伏せる。


 あの日、港で始めた設計。

 腐敗を止めるための装置。


「私は公開を信じていません」


 顔を上げる。


「選んでいるだけです」


「だが今、その選択が誰かを傷つけている」


 レオンハルトは静かに言う。


「制度は常に誰かを傷つける」


「税も、法も、罰も」


「完璧な制度はない」


「だが、止めれば――」


 言葉を切る。


「あなたが守ってきたものが、崩れる」


 沈黙。


 窓の外から、遠く抗議の声が届く。


 エリシアは小さく息を吐く。


「……一時停止を提案します」


 室内が凍る。


「全面凍結ではありません」


「限定的停止」


「失敗履歴の新規公開を一時保留」


「改善履歴を優先表示」


 ヴァルドが息を呑む。


 王子は、目を細めた。


「それは、理念の後退だ」


「理念の修正です」


 声は震えていない。


「私は設計者です」


「壊れる前に、止める」


 長い沈黙の後、レオンハルトが言う。


「……私は反対だ」


 はっきりと。


「止めれば、公開は弱い制度だと証明する」


「止めなければ、社会が割れる」


 初めて、二人の視線がぶつかる。


 婚約破棄のときとは違う。


 今は、対等だ。


「明日の採決で決まる」


 王子は言った。


「私は維持を主張する」


「私は停止を主張します」


 言葉は静かだ。


 だが、その溝は深い。


 扉が開き、夜風が流れ込む。


 どちらが正しいのか。


 まだ、誰にも分からない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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