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婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


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第68話 透明性の交渉卓

 王宮・外交応接室。


 長い卓を挟み、

 レオンハルトとイグナーツが向き合う。


 形式は穏やかだ。


 だが、空気は張り詰めている。


「相互透明性協定案」


 イグナーツが静かに切り出す。


「帝国にとって、重い条件です」


「王国にとっても同じです」


 レオンハルトは即答する。


「主権は軽くない」


 短い沈黙。


「帝国は情報を戦略資源と捉えています」


「王国は信頼資源と捉えている」


 前回と同じ言葉。


 だが、今日は違う。


「信頼は市場を安定させる」


 王子は続ける。


「透明性は、戦争を避ける装置になり得る」


 イグナーツの目が、わずかに動く。


「理想論です」


「合理論だ」


 王子の声は低い。


「依存分散指数が導入された」


「王国は弱点を補強し始めている」


「帝国も同様に補強できる」


 対称性は、脅威でもある。


 だが、機会でもある。


「公開は侵入口だ」


 イグナーツが言う。


「だが、閉じれば疑念が生まれる」


 王子は即座に返す。


「疑念は軍備を呼ぶ」


 沈黙。


 外交は、言葉の戦いだ。


「帝国は安定を望む」


 イグナーツが言う。


「王国もだ」


「ならば、片刃は危険だ」


 王子は、静かに告げる。


「相互性なき透明は、緊張を生む」


 イグナーツは資料を閉じる。


「帝国が全面公開すれば」


「内部反発が起きます」


「王国も起きた」


 王子は、微かに笑う。


「だが、越えた」


 視線が交差する。


 ここは、力の誇示ではない。


 未来の設計だ。


「条件付きで検討する」


 イグナーツが言った。


「段階的公開」


「重要産業は遅延公開」


「緊急時例外条項」


 王子は頷く。


「王国も同条件とする」


 対称だ。


 完全ではない。


 だが、前進だ。


 会談終了後。


 イグナーツは側近に言う。


「彼は理想家ではない」


「設計者だ」


 王宮。


 レオンハルトは、窓の外を見る。


「透明性は武器か」


 小さく呟く。


「違う」


 自ら答える。


「選択だ」


 第5章は、対立から均衡へと移行し始めた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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