第103話 それぞれの場所
教育分野の修正から、数週間。
大きな混乱は起きていない。
支援指標は静かに機能し、
学校への資源配分も改善し始めている。
目立たない。
だが、確かに変わっている。
ハルフェン本部。
ヴァルドが報告をまとめる。
「教育分野、安定推移です」
「批判は残っていますが、拡大はしていません」
アルノーが続ける。
「市場にも影響なし」
「むしろ、制度が分野別に調整されることで、信頼は微増傾向です」
エリシアは頷く。
派手ではない。
だが、壊れてもいない。
「制度は、広がりましたね」
ヴァルドが言う。
「ええ」
「ですが、同じ形ではない」
港、国家、教育。
それぞれ違う設計。
それでいい。
同じである必要はない。
その日の午後。
エリシアは久しぶりに港を歩いていた。
貨物の音。
人の声。
潮の匂い。
すべてが、最初にここへ来た頃とは違う。
だが、変わらないものもある。
風だ。
灯りだ。
人の営みだ。
ふと、声がかかる。
「覚えていますか」
振り向くと、内陸リーデン町の代表だった。
「簡易公開、助かっています」
「少しずつですが、取引も戻ってきました」
深く頭を下げる。
「まだ課題は多いですが」
「それで十分です」
エリシアは答える。
「制度は完成しません」
「続けることが大切です」
代表は笑った。
「それでも、始めることができました」
それだけで、意味がある。
港を歩きながら、エリシアは思う。
制度は、人を変えない。
だが、人の選択を変える。
そしてその選択が、少しずつ世界を変える。
夕方。
王宮へ戻る途中。
遠くに、レオンハルトの姿が見えた。
こちらに気づき、軽く手を上げる。
以前のように呼び止めはしない。
ただ、同じ方向を見ている。
それでいい。
距離はある。
だが、離れてはいない。
エリシアも小さく頷き、歩みを進める。
それぞれの場所で。
それぞれの役割で。
同じものを守っている。
制度ではなく。
人の選択を。
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