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068 大脱走

 理事長とこの騒動の黒幕が内通しているのであれば、俺が帰国しようとしたのがばれたら教え子たちに危険が及ぶかもしれない。

 なるべくなら俺が観念したように見せかけて、ばれないように帰国したい。

 ばれるにしても発覚するのは遅い方がいい。


 そうは言っても教え子に危険が迫っているのなら、今すぐにも帰りたい。

 都合のいいことに明日から週末の休みだ。


 休みの日の俺の行動はチェックされない。寮の中で一人こもっていると思わせられれば2日は時間が稼げるだろう。

 仮に誰かが訪ねて来ても、単純なセリフを自動で返答する人形(スキルで作成)を設置しておけばいい。「今忙しいからあとでね」と回答するだけの人形なんだけど、まあ、これまで誰も俺の部屋を訪ねてきたことはないけどな……。


「はあっ、はあっ」


 そんなわけで、手荷物も持たずにリリットール女学院を抜け出して、国境の検問へと全速力で走っている。


 国境さえ超えれば、学園まで馬車で三日間。通常ならそうだが、俺ならスキルを使って数時間で帰りつくことができる。

 問題である国境の検問はスキルで違法に超えるつもりだ。

 出国申請を握りつぶされているから、どうあがいても適法に超えることはできない。

 違法というが策を巡らせるわけではない。具体的には超ジャンプで国境の壁を超える。赤毛のスキル開拓者(レグ・ベリル) と呼ばれる俺のスキル群を使えば楽勝だ!


 だが、そんな考えは甘かった。


「何処へ行こうというのですか、クランク先生」


 森を疾走する俺の目の前に、バルフェーザ理事長と、そして配下と思われる兵士たちが現れたのだ。


「ば、馬鹿な! 転移だなんて、国家規模の予算が必要だぞ!?」


 そう、彼女たちは俺の目の前に光と共に転移してきたのだ。

 俺でも覚えていない転移のスキル。自分または他者を転移させるスキルを取得するには長い年月が必要となる。そしてこれだけの人数を一度に転移させるには、それだけの術者の数が必要であり、一学院が実行に移せるレベルではない。


「驚きましたか? お伝えしたかどうかは忘れましたが、わたくしはこの国の帝王である皇帝の妹。転移を行使するのも一言で済みます。もちろん転移以外でも、ね。

 そんなわたくしを相手にしているというわけなので、あなたはもう逃げられないんですよ」


「それにしても早すぎる……」


 俺がリリットール女学院を出てからまだ1時間と経っていない。

 不審者感知系のスキルには引っかかっていない自信はあるから、俺の出発は察知されていないはずだ。


「早すぎる? ああ、あの人形のことですか? 逆にあんな、人形でごまかせると思っていたんですか? さすがにお粗末では?」


 くっ! 結構考え抜いた結果なのに、そんな風に言われると辛い!


「何が目的なんだ。国が絡んで俺を足止めする目的はなんなんだ」


「本当はもっと穏便に、そしてクランク先生には幸せになって欲しかったですわ。ですが、ここまで反抗された以上は、そうはいきません。連れ帰って、お仕置きをしますわ。自分からこの国に居たいと心から言い出すまでね」


「理由になってない」


「気になさる必要はありませんわ。坂から転がり始めた玉は転がり落ちるまでは止まりませんもの。もう一度お聞きしますが、このまま学院にお戻りいただけませんか?」


「断る」


「今なら、学院の淑女たちの中から婚約者をお選びいただいてかまいませんわよ?」


「はぁ? なんだって?」


「聞こえませんでしたか? 気に入った淑女と幸せな家庭を築いて帝国で生活なさってくださいな」


「何を言ってるんだ!?」


「そのままの意味ですわ。元々この出張はそう言う趣旨もあったのです。もちろん学院の淑女たちはそれを承知していますわ。あなたが望むのであれば、わたくしでも構いませんことよ?」


「馬鹿な事を! 押し付けられた結婚が幸せなわけがない」


「あら、あなたの国でも同じではないのかしら。貴族に自由恋愛が可能だとおっしゃるのかしら?」


「ぐっ……」


 正論だ。貴族は政略結婚のために恋愛を抜きに結婚することも多い。なんなら会ったことも無い人と婚約していることもある。


「本当に口惜しいことですが、クランク先生の事は兄が大いに評価しております」


「えっ?」


 兄という事は皇帝だよな。


「そんなあなたに嫁ぐという事は帝国では名誉な事。さあ、戻りましょう。よりどりみどりですわよ? なんなら一人と言わず二人でも、三人でもどうぞ。その場合はこの私は遠慮させていただきますが」


 おかしすぎる。

 俺を他国で結婚させるのが目的? 俺を結婚させたがっている両親でさえそんな計画は練らない。

 つまりは結婚させるのが目的ではなく、やはりこの国に足止めすることが目的なんだろう。その真意はなんなのか。

 考えても始まらない。学園に戻りついて学園長を問いただせば全て明るみに出る……。


「じゃあ、俺は君を選ぶよ。バルフェーザ理事長」


「へっ!? あの、本当にわたくしを選ぶんですか?」


「ああ」


 何をすけこましみたいな事を言ってるんだとお思いだろう。だが、これは俺の策。

 相手を油断させて包囲網を突っ切る作戦だ。


「あの……その……」


 今までの凛々しい姿がウソのように、顔を赤らめてもじもじし始めた。

 効果は抜群のようだ。今なら指揮系統に僅かな乱れができるだろう。この隙にっ!


「お断りしますっ!」


「えっ!?」


 ちょっと待って、断られたよ!? さっき自分でも良いって言ったじゃないか!?

お読みいただきありがとうございます。


えっ、お断りされちゃった?

言い出しっぺにお断りされてしまったナオ。混乱と欺瞞が場を支配する!

次回をお楽しみに!

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