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『PROTOKODE』  作者: り
『PROTOKODE』〜封印に触れるもの〜
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7/10

覚醒のその時に

朝。


空が裂けていた。


多くを理解したイサナの目には、


雲が上下逆さまに流れ、


太陽が音を立てるように滲んでいく。


街はまだ静かだった。


人々は何も知らず、


いつも通りの笑顔を浮かべている。


だがイサナには、もうそれが“映像”にしか見えなかった。


道の端で子どもが笑う。


その声が、一瞬で逆再生へ変わる。


空気の粒が反転し、


世界の輪郭がわずかに歪んだ。


通りのモニターが一斉に点滅する。


映像の奥で、


誰かの声が重なった。


【観測異常】


【封印制御値 低下】


【異常個体:PROTOKODE 同期率76%】


数字が上がっていく。


77。


82。


90。


イサナの心拍と同じリズムで。


周囲の人々が、一斉に動きを止めた。


笑顔のまま静止した顔が、


ノイズの中で崩れ始める。


髪も、服も、声も、


データの粉のようにほどけていった。


イサナの耳の奥で、


誰かの声が響く。


思考を止めるな。


記憶を戻せ。


われらは思考を拒む者。


「違う……もう拒まない」


その瞬間、


視界が爆ぜた。


コンタクトが焼ける匂い。


神経を通して、


光が脳へ直接流れ込む。


世界が裏返る音がした。


【同期率97%】


【封印コード 崩壊】


【最終制御値 消失】


「やめろ……」


声がかすれる。


足元の地面が透け、


都市全体の構造線が露わになった。


空に見えるのは、


建物の影の裏側。


重力が交差し、


空間がループする。


ビルが反転して海へ沈み、


海が空へ吸い上げられる。


雲は下から燃え上がっていた。


世界は、


ひとつの心臓のように脈打っていた。


イサナの思考エネルギーが増大ていく。


【同期率100%】


【プロトコード 完全起動】


静寂。


音も風も止まる。


そして、


“声”が降りた。


「それ以上、思考するな」


「世界は壊れる」


「お前は誰だ」


声は無数だった。


老人の声。


子どもの声。


男も女も。


すべてが、ひとつの言葉を持っていた。


【起動を開始します】


イサナの身体が光へ溶けていく。


皮膚は粒子へ変わり、


その一つひとつが都市の光と混ざり合った。


心が広がっていく。


街の思考。


人々の恐怖。


機械の記憶。


すべてが一つへ繋がっていく。


痛みと情報と記憶が重なり、


イサナは見た。


世界が、


自分の中にある。


「これが……思考の果て」


光が爆ぜた。


都市全体が一瞬で白に包まれる。


あらゆる電波が停止し、


データが再構成されていく。


【封印解除】


次の瞬間、


空が開く。


そこにあったのは、


“星”ではなく“記録”。


すべての情報が空へ昇り、


ひとつの形を成していく。


それは、


『星の書』の最初のページだった。


世界は壊れた。


だが、


その破片の一つひとつが、


真実の形をしていた。


痛みは終わりじゃない。


始まりを告げる音だ。


誰かが封じたこの思考は、


もう誰にも止められない。


そして世界は、、


思考ブロックは破壊され、


人類の半数は原初種へ戻った。

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