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『PROTOKODE』  作者: Calva
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微熱の思念

PROTOKODE - 第7話:微熱の思念


深い眠りについていた。

夢を見ていた。


声は、静かだった。

けれど確かに、誰かの“意識”がこちらを見ていた。


目の前に、背の高い影が立っていた。

それが“誰か”イサナは知らないはずだった。

けれど、なぜかその口から出た名前


「……ジェイバー?」


男は振り返らなかった。

だが、その背中から伝わる気配は、穏やかで、どこか切なかった。


「君が回収した、あの記憶、ありがとう」


「……あれは、君の……?」


返事はなかった。

ただ静かに、男は空を見ていた。


「あともう一つ。あとひとつだけ拾ってくれれば……」


声が、やや掠れる。


「完全に力を取り戻す」


その言葉に、イサナの胸が少しだけ締めつけられた。

男は、まだ“目覚めていない”。

だから、会話もこうして曖昧なままなのかもしれない。


「そのとき、君に……伝えたいことがある」


振り返らぬまま、男はそう言った。


次の瞬間、風が吹き抜けて、景色が崩れた。

夢が、覚めた。


イサナは、ゆっくりと目を覚ました。


朝ではなかった。

時間の感覚が曖昧で、窓の外は白とも灰ともつかない色に満ちていた。


「夢……か」


胸の奥に、微かな熱が残っていた。

言葉にならない何か。

触れたら壊れそうな感情。


机の上を見る。


鳥の置物は、そこに変わらずあった。


けれど、気づいた。

表面に、また新しいヒビが一つ、増えていた。


それは割れていくのではなく、中から何かが“出ようとしている”ように見えた。


イサナは、そっと手を伸ばす。

木のはずなのに、そこには明らかな“温もり”があった。


まるで、生き物のようだった。


次の瞬間、スマートコンタクトにわずかな“ちらつき”が走る。


視界の端に、一瞬だけ地図の断片のようなものが表示された。

見たことのない構造。名前も座標もない。


けれど、イサナの中では確かに、“知っている”場所として刻まれた。


その表示はすぐに消えた。

まるで、最初からなかったかのように。


「……あれが、“最後”か」


イサナは立ち上がり、深く息を吸った。


あの夢の中で、ジェイバーは言った。

あとひとつ拾えば、、と。


そして、何かを“話す”と。


「なら……俺は、最後までやる」



そして、視界の奥に浮かぶかすかな残像。


焼けた空。

崩れた都市。

その中央に、もう一度“誰か”の背中。


記憶の終点が、すぐそこにある気がした。


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