六節 名刀を手に入れました
所々が少し錆びてはいるものの、言葉で表現できない輝きを放つ剣が突き刺さっている。
「これが草薙の剣か……」
あまりの美しさに生唾を飲み込んだ。
ゆっくりと俺は手を伸ばす。
剣は意外とあっさり抜けた。
「すげぇ」
思わず馬鹿面でつぶやいてしまった。
【だから何でそんなにセンスがないんだ】
リベラルがあきれた声を出す。
《すげぇもんはすげぇからな》
俺はリベラルの小言を無視した。
「一郎さん。やりましたね」
「ああ」
命の危険を越えて手に入れたものに男二人で笑い合う。
「よし、帰るか」
「そうですね」
俺たちは神殿を出るために歩き出した。
「このまま帰してたまるか」
誰もいないはずの空間に低くこもった声が響く。
俺と大樹はスッと身構えた。
「俺はまだ負けていない」
頭領の体だった炭が風で舞い始め、人型を作り始める。
「マジか……」
常識を超えた光景に言葉を失ってしまう。
大きさこそ人並みになったものの、威圧感は比較出来ないものとなっていた。
「さっきはよくもやってくれたな」
「何のことだか」
俺は冷や汗を掻きながら精一杯強がってみせる。
《どういうことだよ。こいつはさっき倒したはずだろう》
【どうやら、頭領の真の力を開花させてしまったらしいな】
《勘弁してくれよ》
リベラルの分析に緊張感が増す。
「覚悟しろ」
そう言った頭領は妖術で剣を作り、こちらへ襲い掛かって来た。
「やられてたまるか!」
俺は手に入れたばかりの草薙の剣で応戦する。
「そりゃ!そりゃ!そりゃ!」
「くっ」
キン、キン、キーンっと、剣の弾き合う音が響いた。
「くそ、柄の部分が錆びてて握りづらいな」
俺は思わず文句を口にしてしまう。
【集中してマナを注ぎ込め!自分のイメージで形を変えろ】
《そんなこと出来るのかよ》
疑いつつも、言われるままに集中した。
マナを注ぎ込んだ瞬間、剣が激しい閃光を出して輝き始める。
「くそ!何だこの光は!」
頭領は閃光に思わず目をつぶった。
「おおおおおおおおおおおおおおおお」
閃光がおさまった剣は、白銀色の柄で輝く日本刀に変化していた。
「やっぱり日本人はこれだよな」
親しみがある形にテンションが上がる。
「形が変わったからといって何だというのだ!」
少し戸惑ったものの、頭領はひるまず攻撃してきた。
「せい!」
俺もするどく攻撃を返す。
しばらくの間、お互いゆずらぬ攻防が繰り返された。
「ええい。人間が!」
血管を浮き上がらせた頭領は一歩引いて構えをつくる。
「だから、お前も人間だったろうが!」
俺も技を繰り出す為に構えた。
「地獄斬り!」
悪霊を纏った攻撃が迫ってくる。
「斬空一閃!」
負けじと全力を込めた一撃を返した。
猛烈な爆風が大広間を包む。
霧のように薄く広がった煙は徐々に晴れていった。
「一郎さん?」
大樹は恐る恐る目を開く。
「一郎さん!」
俺は振り向いて古臭いガッツポーズをした。
《今度こそ勝ったよな?》
【ああ。邪気は完全に消滅した】
リベラルの一言を聞いて力なく座り込む。
「ほんと、命がいくつあっても足りないわ」
【まったく】
《もうダメ。起きれない》
俺は小言を無視して目をつぶった。




