五節 頭領とタイマンしました
目にも止まらぬ動きでボディブローを頭領に放つ。
「だりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
確かな手ごたえを拳に感じた。
だが、頭領は倒れるどころか憤怒の一撃を返してきた。
「ぐえ……」
ドゴーンという轟音と言葉にならない呻き声をもらしつつ柱に叩きつけられる。
「一郎さん!」
大樹の心配した声が耳に届く。
「大丈夫だから」
かろうじて意識を保ちつつ立ち上がる。
《まいったな》
【お前はこんなものじゃないだろう】
つい弱音を吐いてしまった俺にリベラルの励ましの言葉が掛けられた。
【この敵にはスピードよりもパワー勝負だな】
《目には目をってやつね》
リベラルの的確な助言に集中力を高める。
「〈神器!炎龍の陣!〉」
術を口にした俺の周囲を激しい火柱が包む。
さすがの頭領もマグマに勝る熱気にひるんだ。
「はあ!」
俺は気合いを入れた掛け声で火柱をかき消した。
攻撃に特化した性質の為に、右腕は通常の二倍の太さに大きくなっている。
「覚悟しろよ!」
これも鎧の効果か、いつもより自分が強気な感じがした。
「うーーーおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
一発やられた分も込めた怒りの拳を紫色の腹に放つ。
「ぐあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
さっきまでビクともしなかった頭領は片ひざをついた。
「シャーーーーー。どうだ!」
思わずテンションが上がり叫んでしまう。
【馬鹿者!来るぞ】
浮かれ気味になりかけた俺にリベラルが忠告してきた。
「なめるなよ!俺は人間を超えたんだ!」
獣の姿から聞くと思わなかったセリフに少し動揺してしまう。
その隙に一気に間合いをつめてきた頭領は持っていた斧を勢い良く振り落としてきた。
俺は何とか攻撃をかわす。
ドスーンっと、マンガみたいな音が部屋中に響いた。
「あぶねえ~」
胸を撫で下ろしていると、キッとこちらを睨んで来た頭領がまた斧を振りかぶる。
「下等な人間風情が!」
「お前も人間だったろうが!」
頭領の一言に、もう人間とは別物となってしまった化物として俺は認識した。
「あの世でやり直せ。この馬鹿野郎ーーーーー」
【決めてやれ!】
リベラルからも珍しく熱い言葉が飛ぶ。
「〈炎龍剛波拳!〉」
俺は、龍のように波打つ火炎で包まれた右腕をさっきと同じ場所に打ち込んだ。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
激しい雄叫びを上げ、頭領は仰向けに倒れた。
「ば、馬鹿な。俺は……人間を……超えたはずだ」
そう言って頭領の体は炭となり消え去った。
「はぁ、はぁ、はぁ。何とかなったな」
炎龍の陣を解除して気が抜けた俺は尻餅をつく。
「一郎さ~ん。ご無事ですか?」
距離を置いていた大樹がこちらに駆け寄ってくる。
「ああ。どうにかね」
力なく手を振りながら応えた。
「しかし大したものですな。頭領を倒すとは」
「まだまだだけどな」
疲れたサラリーマンのように肩を揉みながらゆっくりと立ち上がる。
【まあ、少しは成長したな】
ツンデレキャラのようにリベラルが褒めてきた。
《何か気持ち悪いな》
【気持ち悪いとは何だ】
今度は昭和の頑固親父みたいに怒っている。
《ホント鎧様のおかげだよ》
俺は拳を握り締めてぼそっと心の中で呟いた。
【そう思うなら、もっと修行しなければな】
《そこはほどほどにお願いします》
張り切るリベラルに丁重にお断りする。
そう冗談は言ったものの、鎧の力を使いこなせていない自分の未熟さを改めて実感した。
「一郎さん、草薙の剣を手にしましょう」
「そうだった」
頭領との戦いのせいで目的を忘れてしまっていた。
「では、伝説の武器とご対面しますか」




