三節 力戻りました
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
異世界の洞窟で、俺は人生で出したことがない雄叫びを上げていた。
《これがマナの力か?》
口では説明できないが、全身に力がみなぎっているのを感じる。
【そうだ。これで本来の力が出せる】
そう言うリベラルはどことなく嬉しそうだった。
しばらくして赤い光が少しずつ弱くなりエナジーストーンの輝きは消えた。
《見た目は……あれ?戻っている?》
【あれは多用すべきではない】
《そうだったな》
【それより女の手当てを急げ】
そう言われた俺はカミシアの側に寄る。
「ごめん。待たせたな」
「いや、気にするな。私は平気だ」
言葉とは違い、カミシアの体はだいぶ弱っていた。
《まずいな。急がないと》
【真の状態なら使える技があるぞ】
リベラルから助けの一手が出される。
【他の能力は落ちるが一つに特化できる】
久々のRPG感に、不謹慎だがちょっとテンションが上がってしまう。
《来たね。師匠お願いします》
【神器、辻風の舞と叫べ】
俺は呼吸を整えて大声で叫んだ。
「〈神器!辻風の舞!〉」
その叫びに応えるように鎧は緑色へと変色した。
「よし。カミシア、もう少し辛抱しろよ」
俺はまたお姫様抱っこでカミシアを抱きかかえた。
「はぁ、はぁ、バ……カモノ」
どんなに弱っていても口は強気で安心してしまう。
「じゃあ、行くぞ!」
駆け出した一歩ですさまじい突風が顔に当たる。
《なんじゃ~こりゃ~》
有名なセリフをついつい叫んでしまう。
【だらしないぞ】
《いやいや、速すぎでしょ》
4、5日ぐらいかけて来た道のりがあっという間に過ぎていく。
「はぁ~何とか戻ってきたよ」
俺は髪をぼさぼさにしながら城にたどり着いた。
「おかえりなさ~い」
聞き覚えのあるのんびりした声が後ろから近づいてくる。
「お、クリス」
俺は技術班のクリスと向き合う形に振り返った。
「え!カミシアさん、ボロボロじゃないですか!」
腕の中で弱々しく呼吸しているカミシアを見てクリスは驚く。
「そうなんだ。早く治療を」
「わかりました。こっちです」
俺は駆け出したクリスの後を追った。
「こんなのあるんだな」
俺はクリスの技術室にある酸素カプセルのような治療ポッドで眠るカミシアを見つめていた。
「とりあえず命に別状はないですが、あの状態でしたから」
さずが戦闘民族だけあって命は無事だったが、しばらく目覚めそうになかった。
「それはそうと、鎧は解除しないんですか?」
ふと思い出してクリスが訊いてくる。
「ああ、カミシアの無事だけは確認しときたかったからな」
「え?」
クリスは理由がわからない顔をしていた。
「完全開放を使ったからな。解除したら反動がくるんだ」
「反動ですか?」
「だから、後は頼むよ」
バタン!
「一郎さん!大丈夫ですか?しっかりしてください!」
力を解除して倒れた俺の意識はすぐに闇に包まれてしまった。




