二節 魔獣に見つかっちゃいました
ポタ…ポタ…ポタ、と音をたてて血が俺の腕から落ちている。
「くそ~マジ痛ぇ~」
辺りはすっかり夜の闇に覆われていた。
「バオーーーーー」
ラノベやマンガの世界でしかない知らない巨大狼のような魔獣の声が木霊する。
「来い!私が相手をしてやる」
カミシアが魔獣を俺から引き離す為に全力で引きつけていた。
《もう目の前だってのに》
あと少しでゴルック山に着くという所で突然魔獣が襲ってきたのだ。
【仕方ないな。切り札を使うしかあるまい】
リベラルは苦渋の選択という感じで許しを出す。
《わかった。あれを叫べばいいんだよな?》
【そうだ。もうあれしかあるまい】
そう、鎧のエレルギーが尽きたときの切り札を取ってあるのだ。
俺は腕の痛みを堪えて切り札である言葉を叫ぶ。
「神器!完全開放!」
光輝く柱が遥か上空の雲を突き抜けた。
あまりの眩しさにつぶっていた目をゆっくり開く。
鎧はいつもと違い、黄金に輝き、赤いマントを風でなびかせていた。
《おお~派手だな。傷も治っているし》
【急げ!この力はそう保てないと言ったろう】
リベラルの声で気を締めなおす。
「はあーーーーー」
カミシアを助ける為に俺は飛び出した。
「ばおーーーーー」
魔獣の牙がカミシアの肩をかすめる。
「くぁ!」
ちょっとかすっただけで起きた風圧で木に叩きつけられてしまう。
「はぁ……はぁ」
少し呼吸を乱したが、すぐにカミシアは立ち上がった。
「私だって鍛錬しているんだ!」
叫びながら振りかざした斬撃が魔獣の右前足を切り裂く。
「ぐぁーーーーー」
魔獣は痛みの怒りを込めた一撃をぶつけてきた。
咄嗟にガードしたが、数え切れぬ巨木をぶち抜きカミシアは吹き飛んだ。
頭が血だらけになりながらも立ち上がる。
「くそ……」
朦朧とする意識でフラフラになりつつも少しずつ歩みを進めていく。
ザザザザザーと、凄まじい轟音を響かせながら魔獣が近づいてきた。
あっという間に牙がカミシアに迫る。
「きゃう~」
さっきまでの迫力とは打って変わって、魔獣は子犬のようにか細い鳴き声を出しつつ倒れこむ。
「どうだ!この野郎!」
魔獣とカミシアの間に拳を振り上げた一郎が立っていた。
「大丈夫か?」
一郎はカミシアをすっとお姫様抱っこする。
「バカ。何をする」
赤面したカミシアは一郎から離れようともがいた。
「ちょ、ちょっと。落ち着けって」
一郎は落ちそうになるのを慌てて抱きかかえる。
「こうした方が動きやすいから我慢しろよ」
「何で私がこんな辱めを受けねばならぬのだ」
カミシアは右手で両目を覆い、落ち込む素振りを見せた。
「そんなに落ち込むなよ。ちょっとヘコむわ」
【時間がないぞ】
《わかってますよ》
魔獣の亡骸を残し、一郎は一瞬で姿を消した。
一、二分も経たないうちに一郎は大量のマナが眠る洞窟に着いていた。
「これほどのエナジーストーンは見たことがない」
カミシアは目が開けているのが辛いほどの光に驚いている。
一郎たちの目の前には洞窟一杯にエナジーストーンが山積みとなっていた。
「マジか」
一郎はアホ面で口を開けてしまう。
【早く手をかざせ】
いつものツッコミが入る。
「おろすぞ。ちょっと待っててくれ」
一郎はカミシアを下ろすと前に歩いていく。
すっと手をエナジーストーンにかざすと赤い閃光が辺りを包んだ。
「おーーーーー」




