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文明を継ぐ魔女  作者: XType84
第一章 ありふれた青春
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第一章 第六節 技術者として

2002年。

東亜機工に入社して一年が経った頃、

天城香織は、すでに新人の枠を越えつつあった。


春の工場は、金属の匂いと機械音が混ざり合い、

一年中変わらないリズムで動き続けている。


その中で――

香織は坂本主任と肩を並べて図面を覗き込んでいた。


---


「主任、ここの加工順なんですが……」


香織が図面を指差すと、 坂本は工具箱を閉じて言った。


「……現場へ行くぞ。」


二人は歩きながら議論を続ける。


「この順番だと、段取り替えが増えます。」

「だな。だが、治具の制約がある。」

「治具を改造すれば……」

「それを言うと思った。」


坂本は、少しだけ口元を緩めた。


新人の頃は質問ばかりだった香織が、今では自分と同じ視点で図面を見ている。


坂本は心の中でそう呟いた。


現場の作業員たちが二人を見てひそひそ話す。


「なんか、あの二人……息ぴったりじゃない?」

「主任が新人と組むなんて珍しいぞ。」

「天城さん、すごいな……」


香織は気づいていない。だが坂本は、周囲の視線を感じていた。


(この子は……現場の技術者として育つ。)


---


ある日。

新しい生産ラインの改善プロジェクトが立ち上がった。


工場長が言う。


「坂本、今回の改善はお前に任せる。ただし――新人を一人つける。」


坂本は即答した。


「では、天城をつけてください。」


工場長は少し驚いた。


「は?あいつは新人だぞ?」


「だから天城です。」


「理由は。」


「……現場を見る目があります。」


坂本は香織を見た。


香織は目を丸くした。


「わ、私ですか?」


「そうだ、お前しかいない。」


その言葉は、香織の胸に深く響いた。


(主任が……私を認めてくれた。)


香織は、図面を抱きしめるように持ちながら頷いた。


「……頑張ります!」


坂本は静かに言った。


「頑張れ。俺がついてる。」


---


改善プロジェクトが始まって数週間後。


香織は、夜のアパートで電話をかけた。


### 相沢絢香ライバル

「絢香、久しぶり。どう?仕事は。」


「主任と組むことになったの。」


「主任が認めたなら、本物ね。」


「そんなことないよ。」


絢香は、香織の成長を心から喜んでいた。



### 氷室冴子(先輩)

「藤堂。」


「まだ?」


「ああいう男は忘れない。」


氷室は忙しい中でも、香織を気にかけていた。


---


週末。

香織は久しぶりに実家へ帰省した。


母が笑顔で迎える。


「香織、痩せてない?ちゃんと食べてる?」


「食べてるよ、お母さん。」


父は新聞を置き、香織を見た。


「仕事はどうだ。」


「主任と一緒に改善プロジェクトを任されました。」


父は満足そうに頷いた。


「工具箱まだ使ってるか。」


「毎日使ってる。」


「そうか。」



兄は唐揚げをつまみながら言う。


「主任と? なんか仲良くやってるじゃん。」


「仕事だから!」


「はいはい、仕事仕事。」


母が笑い、父が頷き、兄が冷やかす。


その空気が、香織には心地よかった。


---


改善プロジェクトは順調に進み、香織は坂本と共に現場を走り回った。


香織は機械の下へ潜り込み、真っ黒な顔で出てくる。

「直りました!」


坂本は、わずかに口元を緩めた。

「よし!今日は終わりだ。」

(……この子は、技術者だ。)


機械の音が工場へ響く。

香織は工具箱を抱え、坂本の後を追った。



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