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「聖女様、お加減は如何ですか?」
聖女付きの侍女であるミーシャは痩せ細った聖女の身体を支える事を誇りに思っていた。
ミーシャの身体には精霊と人と世界を繋ぐ種族と呼ばれるエルフ族の血が半分程流れている為、聖女の侍女に選ばれた。
先代のカトリーナ、先々代のリリーナと続いて3度目の侍女就任。
ミーシャはナタリアを今迄仕えた聖女の中でも最優であると認識し、ナタリアと共に巡礼の旅を歩む事を喜ばしい事であると考えている。
巡礼の旅は過酷だ、旅の始まりには女性らしい身体付きをしていた聖女ナタリアは食が細い事も手伝って礼拝の時間以外は床に伏せる程に細い。
木乃伊、と言う言葉が頭に過ぎる。
手のひらを口元に当て、微かに呼吸がある事に安堵する。
教会の関係者が「今迄に見た事が無い」と驚く聖女の状態を、だからこそ、巡礼が終わる時には王国に繁栄が齎されるのだと皆一様に口にする。
(いつ死んでもおかしくない状態なのに、辛うじて生命を繋いでいらっしゃる...)
聖女ナタリアの周囲には、強い力を感じる魔素が巡っている。
医師は、「恐らくこの強い魔素が、聖女様の生命を繋いでいるのでしょう」と言った。
それ以外に、聖女ナタリアが生命維持が出来ている理由が分からないと言っていた。
人間族が魔素で生命を繋ぐなど、ミーシャは今迄に見た事がなかった。
それは本来、エルフ族の特性である。
エルフ族が精霊と繋がる種族であるのは私欲なく、精霊と共に生きる事が出来る性質―――即ち、本来人類が持ちえる三大欲求が排除されている存在だからである。
聖女ナタリアは、人間でありながらエルフ族に近い境地に至っている。
彼女こそ、真なる聖女であるのだ、とエルフ族の長老が口にしていた。
国の各地で起きている異変は、真なる聖女の誕生への祝福であるのだと。
長い苦難の時代は終わりを迎え、人類は未曾有の繁栄を得る事になるだろう、と長老は王家に伝えた。
「もうすぐ、旅も終わりを迎えますね」
薄らと開いた瞳はガラス玉の様だ。
ミーシャは、人生で最優の主君であるナタリアにそっと水差しを差し出すのだった。




