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「……さて、高麗から持ち帰った至宝の数々。これをどう動かすかが、代筆屋としての私の腕の見せ所ね」


私は、趙長官への「お土産」を、あえて長官本人ではなく、その懐刀である部下の方々に手渡すことにしました。


贈り物に潜む「義」の布石。


お嬢の独り言

「……趙長官。

あの御方は欲が深いけれど、同時に『面目』を何より重んじる。

長官に直接届けるのは、公式な報告書と、朝廷に献上するための最高級品だけでいいわ。

本当に大切なのは、その周りを固める部下たち。

日夜、長官の機嫌を取り、実務を回している彼らに、高麗の希少な薬草や、見たこともない意匠の装飾品を『おじさんからの感謝の印』として配り歩く。

『これは長官への忠義を支える皆様への、心ばかりの品です』。


そう言って微笑めば、彼らはもう『華翊かよく商会』の味方。

次に何か難題が起きたとき、長官の耳元で私たちの有利な噂を流してくれるのは、彼らなんだから」


おじさんは、不器用な手つきで小分けにされた包みを部下たちに差し出し、「ガハハ! 故郷の味には負けるが、高麗の酒もなかなかいけるぜ!」と、持ち前の人懐っこさで彼らの懐に飛び込んでいきました。


お嬢の独り言

「……おじさん。

あんたのその、身分を問わず誰とでも肩を組める軽やかさが、どれほど私の筆を助けてくれているか。

省倉せいそうに収めた財宝は『力』。

そして、こうして部下たちに配る贈り物は『種』。

やがてこの種が芽吹き、臨安りんあんの役所全体が、私たちの知らないところで『燕青の義』に染まっていく。

趙長官が気づいたときには、もう手遅れ……いいえ、長官にとっても、私たちと手を組むことが唯一の正解になっているはずよ」


ようちゃんは、お土産を受け取った部下たちの緩んだ顔を見て「おねえさま、作戦通りですね!」と耳打ちし、美林びりん様も、人の心を動かす絶妙な按配あんばいに、感銘を受けておいででした。


お嬢の独り言

「……よし。これで役所への根回しは完璧。

次は、趙長官本人への『公式報告会』ね。

おじさんが海で見てきた驚天動地の物語を、私が最高に脚色して、長官の自尊心をくすぐり倒してやるわ。

さあ、燕青の娘として、今夜は最高に華やかな『凱旋報告書』を書き上げることにしましょう!」

私は、お土産を配り終えて戻ってきたおじさんの、誇らしげな笑顔を見ながら、新しい墨を力強く摺り始めました。

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