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「……おじさんったら、本当にもう! 船から降りて、省倉せいそうに荷を収めて、趙長官の部下たちに配り終えたと思ったら、今度はどこへ消えたのかしら」


私は、呆れ顔で空になったおじさんの椅子を見つめました。

高麗での荒波や、あの『撃毬けっきゅう』の激戦、そして港守みなともりとの対峙……。普通なら数日は泥のように眠るはずなのに、あの人は本当に、風のようにじっとしていられない性分なのね。


風の如き燕、星の如き物語。


お嬢の独り言

「おじさん。

きっと、柴家さいけの当主様に、公にはできない『海の外の真実』を伝えに向かったのか。

あの人が動くところ、必ず新しい『義』の火が灯る。

でも、残された私たちが、その武勇伝を全く知らないわけにはいかないわ。

幸い、船に同乗していた公孫勝様のお弟子さんたちが、おじさんの代わりに、それはもう『長々と』、一文字も漏らさず語ってくださっているけれど」


お弟子さんたちは、道術の修行で鍛えた驚異的な記憶力で、航海中の出来事を滔々と語り始めました。

嵐の中での術の発動、高麗の山寺での無準師範ぶじゅん しはん様の静かなる威厳、そして——。


お嬢の独り言

「……お弟子さんたちの話を聞いていると、まるでおじさんの背中を追いかけて、私まで海を渡ったような気分になるわ。

馬上で風を切り、異国の戦士たちを圧倒したその姿。

敵対していた港守の心を、力ではなく『器』で溶かした瞬間。

そして、無準師範様が日ノ本へと旅立つ際、おじさんの肩を叩いて微笑まれたあの慈愛。

公孫勝様の弟子たちが語る物語は、おじさんの照れ隠しがない分、余計にその凄まじさが伝わってくる。

燕青の娘として、私はこの一言一句を、最高にドラマチックな『航海日誌』として書き留めてやるわ!」


ようちゃんは、お弟子さんたちの話に身を乗り出して「ええっ! おじさん、そんなに格好良かったんですか!?」と目を輝かせ、美林びりん様も、おじさんの無双の活躍に、誇らしげに頷いておいででした。


お嬢の独り言

「……よし。おじさんがどこかで新しい『縁』を繋いで戻ってくるまでに。

私はこのお弟子さんたちの言葉を、臨安りんあんの街を揺るがすような、最高に熱い『英雄譚』に仕立て上げておくわ。


さあ、筆を走らせて。

おじさんのいない間に、商会の名前を天まで高く掲げてやるんだから。

戻ってきたときに、自分の有名人ぶりに腰を抜かすおじさんの顔が、今から楽しみだわね!」

私は、お弟子さんたちが語る「燕青の義」を、一滴の墨も無駄にせず、力強く紙に刻み始めました。

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