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「……おじさん、ついにやったわね。力でねじ伏せるのでもなく、金で釣るのでもない。馬上の『撃毬けっきゅう』で見せたあの鮮やかな身のこなしが、高麗の武人たちの魂に火をつけたのよ」


港守みなともりの男が、先ほどまでの刺すような視線を一変させ、恭しく一礼しました。


案内された先は、壁欄渡へくらんとを一望できる石造りの高楼。そこには、この地の物流と防衛を一手に握る、機関の頭領が待ち構えていました。


壁欄渡の晩餐、碧海の契り。


お嬢の独り言

「……正式な『客』としての招待。

それは、単なる宋の商人としての扱いじゃないわ。

高麗の誇り高き機関が、燕青という男の『器』を認め、対等の友として迎え入れたということ。

頭領の男は、熊のような体躯に、百戦錬磨の傷跡を刻んだ顔をしていたけれど。


おじさんと目が合った瞬間、その双眸に宿ったのは、かつての梁山泊りょうざんぱくの英傑たちが持っていたのと同じ、混じり気のない『敬意』だったわね。


『宋に、これほどまでの馬術と度胸を持つおとこがいたとはな。

燕青殿、貴殿が運んできたのは青磁だけではない。我ら高麗の武人が忘れていた「熱」だ』」


宴の席には、選び抜かれた高麗の酒と、山海の珍味が並びました。

おじさんは、真っ黒に焼けた顔で豪快に杯を干しながら、公孫勝様のお弟子さんたちが静かに見守る中で、とうとう本題を切り出したはず。


お嬢の独り言

「……おじさん。

宴の盛り上がりに乗じて、あんたはさらりと口にしたわね。


『これほど旨い酒があるなら、次はぜひ、南宋で一番の料理を合わせたいもんだ』。

それを単なる自慢話にせず、高麗の頭領たちの食欲と好奇心を絶妙にくすぐる『次なる商売の種』に変えてしまう。

燕青の娘として、あんたのその、戦場と商場を地続きで駆ける天性の勘には、惚れ惚れしちゃうわ」

頭領は身を乗り出し、「その料理、いずれ我が機関の者たちにも味わわせる機会を作ってくれ」


と、固い握手を交わした。

これで、高麗人参や高麗紙の「帰り荷」は、最高級の品が約束されたも同然よ。


お嬢の独り言

「……よし。趙長官も、この知らせを聞けば腰を抜かすわね。

単なる交易を超えた、武人同士の『血の通った同盟』。

お父さん。あんたが高麗で広げたその風呂敷、私が臨安りんあんで最高に格好いい『外交文書』に仕立て直してやるわ。

私は、おじさんの勝利の美酒を想像しながら、高麗との「不滅の友好条約」として、最も力強い書体で書き上げます。

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