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「ははっ、違えねえ! さすがはげんの一族だ。と、おじさんも云うはず、その意気地、空の上で親父さんたちも笑って見てるぜ!」


私は思わず、手にしていた筆を机に叩きつけ、豪快に笑ってしまいました。


代筆屋として、理屈や損得で動く連中ばかりを相手にしてきたけれど……あんたたち三兄妹のその「自分たちの腕一本で生きていく」という剥き出しの矜持こそ、今のこの湿気った臨安りんあんに一番必要な風だわ。


泥中の蓮、独り歩む。


お嬢の独り言

「……協力なんて必要ない。

その一言が、どれほど重く、そして清々しいか。

阮家の兄様たちは、役人の顔色を窺うことも、大きな商会の庇護に縋ることも良しとしない。

兄は網を打ち、弟は泥を掴んで稲を育て、妹は包丁一本で客を唸らせる。


誰に頼るでもなく、自分たちの血と汗だけで、この乱世のど真ん中に自分たちの『国』を築いているのね。

おじさんが燕青として、盧俊義ろしゅんぎに仕えたのとはまた違う、これは最も原始的で、最も強い『自由』の形だわ」


私は、書きかけていた「援助の目録」を、迷わず丸めて放り投げました。

あんたたちに「施し」なんて言葉は似合わない。


お嬢の独り言

「……いいわ。協力はいらない。

だったら、これは『商売』にしましょう。

兄様が獲った一番の魚を、私が買う。

弟様が育てた最高の人参を、私が高麗への帰り荷として趙長官に売りつける。


そして妹さんの料理屋には、私が一番厄介で、一番金払いのいい客を放り込むわ。

助け合いなんて甘っちょろいもんじゃない。

お互いの背中を預け合い、それぞれの戦場で勝ち残る。


それこそが、三十六星の末裔たちが交わすべき、真の盟約めいやくなんだから」

ようちゃんは、その火花の散るようなやり取りに「おねえさまも、阮家の方々に負けないくらい強情ですね!」と苦笑いし、公孫勝様は、自立した魂たちが共鳴し合う様子を、満足げに細い目で見守っておいででした。


お嬢の独り言

「……おじさん。

見ていてちょうだい。あんたが帰ってきた時、この屋敷の周りには、誰にも縛られない、誰にも屈しない本物の者たちが、自分の足で立っているわよ。


阮家の三兄妹。あんたたちの生き様、私の邸報ていほうで一文字も漏らさず書き留めてやるから。

さあ、今夜は商売抜きだ! その旨い酒と肴、私の自腹でたっぷり頂かせてもらうわよ!」


私は、おじさんから預かった「燕青の印」を懐に押し込み、阮家の妹さんの店へと駆け出しました。

未来を担う者が目覚めるその日まで、この荒くれ者たちと一緒に、この泥臭い時代を笑い飛ばして生き抜いてやる。

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