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港に来る船が減る

商人が現金ではなく“物”で取引したがる

官の支払いが遅れる


「この国、もうダメだ」


米の値段が毎日変わる

兵士が装備を売る

噂だけが増える


「……変ね。

港はまだ動いているのに、“信用”だけが先に死んでる」


「金はある。物もある。

でも——誰も、明日を信じていない」


朝の市は、妙に静かだった。

いつもなら、野菜を並べる音や、値を呼ぶ声が重なる時間だというのに、

今日は、どこか隙間がある。

籠を抱えたまま、私は立ち止まった。


——魚が、ない。

いや、魚だけじゃない。

塩も、布も、昨日まで山のようにあったものが、

ごっそり抜け落ちたみたいに消えている。


「……今日、船は?」


店の男に声をかけると、

彼は一瞬だけ、周りを見た。


「来ねえよ」


低く、吐き捨てるように言う。


「来るわけねえだろ」


その時、向こうの通りで、何かが崩れる音がした。

振り向くと、荷車がひっくり返っている。

布が散らばり、子どもが泣いている。

けれど——誰も、拾わない。


「北からだ」


誰かが言った。


「もう、越えてる」


何を、とは言わなかった。

けれど、その場にいた全員が、同じものを思い浮かべた。

その瞬間だった。

一人が走った。

理由なんてなかったと思う。

ただ、走った。

それを見て、別の誰かが動く。

次に、三人。

五人。

気づいたときには、市はもう“市”じゃなかった。

人の流れが、道を埋めている。

押される。

叫び声が上がる。

誰かの籠が落ちる。

踏まれる。


「戻れ!」


兵が叫んでいる。

けれど、その声は、もう誰にも届かない。


皆は、ようやく理解した。

これは——

逃げているんじゃない。

崩れているんだ。


振り返ると、城壁が見えた。

いつもと同じ場所に、同じ形で立っている。


何も変わっていない。

それでも、もう守ってはくれないと。



首都開封が陥落?


皇帝・皇族が拉致されたらしい。

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