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「……ふふ、おじさんたら。結局、最後は自分で先頭に立たないと気が済まないのね」


私は、ようやく全ての印が揃った分厚い渡航書類を束ね、満足げに息を吐きました。


趙長官は「高僧の渡海を支援する華翊商会」という名声にご満悦で、二つ返事で許可を出してくださったわ。高麗側からの返書も、愛蘭アイランさんの完璧な書状のおかげで、非の打ち所のない歓迎の意が綴られている。


おじさんが掲げる「華翊かよくの帆


お嬢の独り言

「……書類の上では、すべてが整った。

でも、おじさんが言う通り、紙の束で荒波や不逞の輩から船を守れるわけじゃない。

だからこそ、公孫勝様が遣わしてくださったお弟子さんたちの存在が、何よりも心強いわ。

彼らが道教の秘術や確かな武芸で、船底から帆の先までを清めてくれる。

目に見える公の許可と、目に見えない守護の力。

これでようやく、無準師範ぶじゅん しはんを安心してお乗せできるわね」

ようちゃんと美林びりん様は、高麗人参や高麗紙を積み込むための空きスペースを最終確認し、愛蘭さんは現地の港での細かな作法をおさらいしています。


代筆屋の中は、出航を控えた心地よい緊張感に包まれていました。

そして、その中心に立つのは、やはりあの方。


「……おじさん。

真っ黒な顔をして、もう船の甲板で指揮を執る準備は万端みたいね」


おじさんは、今回は、通訳官は、要らない、俺が行けば何となくなると長旅の疲れも見せず、まるで獲物を狙う虎のような鋭い目で、積み荷の青磁を確認していました。


「お嬢、書類は任せた。だが、高麗の門を叩くのは俺の仕事だ。

あっちの連中に、華翊商会の『本気』を見せつけてやるからな」


お嬢の独り言

「……おじさん。

あんたが先頭に立って、あの壁欄渡へくらんとの門を叩く姿が目に浮かぶわ。

娘の私がここで筆を振るい、おじさんがあちらで道を切り拓く。

血の繋がった二人が、南と北を、そして宋と高麗を繋ぐ太い一本の線になる。

燕青の娘として、これほど誇らしいことはないわね」


私は、おじさんの胸元に、最新の邸報ていほうと、趙長官からの親書をそっと差し込みました。


「いってらっしゃい、おじさん。

最高級の青磁と、尊い師範、そして私たちの『誇り』を。

無事に、そして豪快に、届けてきてちょうだい」


臨安の港に、華翊商会の旗が力強く翻る。

おじさんの号令と共に、私たちの新しい航海がいよいよ始まりを告げました。

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