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おじさんが高麗への荒波へと漕ぎ出した直後、入れ替わるようにして屋敷に届いたのは、北の地平、燕山からの重みのある書状でした。
受け継がれる「義」の系譜
お嬢の独り言
「……おじさんが海を渡ったその足跡を追うように、今度は山を越えて、古き縁が戻ってきたわ。
燕山からの便り。そこには、かつて梁山泊で名を馳せた英傑たちの、尊い血を引く者たちの名前が連なっていた。
楊林様、裴宣様……。飲馬川を守り抜く彼らの子孫が、おじさんが密かに送り続けていた援助に対して、深い感謝を綴っている。
『数々の品、ありがとうございます。ご協力できることがあれば、いつでもご連絡を』と。
代筆屋として、これまで数多の義理や貸し借りを紙の上に認めてきたけれど、これほどまでに真っ直ぐで、打算のない献身の言葉を私は知らない」
私は、その力強い筆致の書状を、おじさんの居室にある文箱へと大切に収めました。
おじさんは、自分の手柄を決して誇らないけれど、彼が裏で繋ぎ、守り続けてきた「命の灯火」が、今こうして大きな力となって私たちの背中を押してくれている。
お嬢の独り言
「……そして、もう一通。
神駒子・馬霊様の子孫からも、熱い言葉が届いているわ。
『恩人、盧俊義様の一族に、心からの感謝を』。
おじさんの主であった盧俊義様(お爺さま)。その誇り高き名は、今もなお北の地で、語り継がれる光となっているのね。
おじさんが私を『お嬢』と呼び、私がこの代筆屋の看板を守っている。
それは、単なる商売ではなく、あの方たちの気高い志を、この乱世に絶やさないための『誓い』なのだと、改めて背筋が伸びる思いだわ」
お嬢の独り言
「……お父さん。
燕青の娘として、私はこの書状を『誇り』として胸に刻むわ。
あんたが帰ってきた時、この屋敷はもう、ただの商会じゃない。
かつての英雄たちの志を束ね、新しい時代を切り拓く、揺るぎない城になっているはずよ」
私は、燕山からの書状に添えられた古い地図を広げ、次なる戦略の図面を、より大胆に描き込み始めました。
お嬢自身の「真の役割」について、公孫勝が語り始める。
公孫勝様が「これこそが運命の巡り合わせだ」と、お嬢に燕山との新たな連携を説く。




