表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/154

71

「おじさん。……一番先に伝えておかなくちゃいけないことがあるの」


再会の喧騒を少しだけ遠ざけ、私はおじさんの目をまっすぐに見据えて言いました。


その一言の重さを察したのか、おじさんの顔から笑みが消え、鋭い勝負師の目に戻ります。


「……岳飛がくひ様が、いらっしゃったわ」


おじさんは一瞬、息を呑み、固まりました。


自分が不在の間、金国の密偵との糸が途切れた危惧。それが、この国の守護神自らを動かしたという事実の大きさを、誰よりも理解しているのはおじさん自身です。


「……岳飛殿が、自らここに? お嬢、お前……」

「ええ。柴翊さいよく様の導きで、飯店の二階を貸し切りにしてお会いしたわ。


おじさんが金国の密偵とも友好があったこと、そして今、その報告が途絶えていること。


岳飛様は、その『空白』を埋めるために、わざわざ足を運ばれたのよ」


私は、おじさんが熱病で倒れている間に、代筆屋として、そして娘として、その責任をどう引き受けたかを淡々と説きました。


「おじさんの代わりに、私がその『糸』を預かるとお伝えしたわ。

燕青がいない間、その役割は『華翊商会』という器の中に隠し、守り抜くと。


……岳飛様は、私の言葉を信じて、この商会を国の喉元を守る砦として認めてくださった」


おじさんは、真っ黒に焼けた顔を少し歪め、大きな溜息をつきました。

それは落胆ではなく、娘が自分の想像を遥かに超える領域に踏み込んだことへの、驚きと深い安堵が混ざったものでした。


「……そうか。お前が、あの御方と対峙したのか。

俺が海の上で死にかけている間に、この家はただの代筆屋から、国の命運を左右する場所に変わっちまったんだな」


おじさんは、私の肩にポンと大きな手を置きました。その重みは、これまでの「留守番」への労いと、これからの「共闘」への承諾でした。


「お嬢。……よく守ってくれたな。

俺の繋いできた泥臭い縁を、お前が立派な『義』に昇華させてくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ