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「見つけた!」
花陽ちゃんの弾んだ声が、静かな屋敷に響き渡りました。
李美林様と一緒に街へ出掛けてから、まだそれほど時間は経っていません。
市井の真珠
お嬢の独り言
「……ふふ。まさか、陽ちゃんと美林様の二人が、これほど早く、しかも申し分のない人物を見つけてくるなんて。
柴翊様が仰っていた『高麗の通訳官』の候補。
二人が連れてきたのは、臨安の織物問屋で働いていた、高麗出身の女性でした。
陽ちゃんは、美林様の警護で目を光らせる一方で、街の噂話や職人たちの会話から、確かな目利きと実務経験を持つ人物を探していたのね。
美林様も、南国の王族としての直感で、彼女の持つ『品格』と『知恵』を感じ取ったご様子。
二人が見つけたその女性は、表舞台に立つ官職こそ持っていなくても、貿易品である布地や、生活文化の面で両国の交流を深く支えてきた、市井の真珠のような存在だったわ」
私は、美林様のために用意していたデスクの隣に、もう一つ、小さな椅子を用意しました。
これから始まる『華翊商会』の定期便。青磁の美しさを伝えるだけではなく、高麗の生活に寄り添った、細やかな商いを展開するために。
「陽ちゃん、美林様。ご苦労様。
さあ、彼女をお連れして。
燕青おじさんがいない間、この屋敷に新しく加わるのは、荒々しい武人ではなく、静かに文化を繋ぐ繊細な糸のような存在がいい。
……おじさん。
あんたが熱病で寝込んでいる間に、私の書房には新しい布の香りと、聞き慣れない言葉の響きが満ちていきそうよ。
青磁を包む柔らかな布のように、私たちの商売を優しく、でも強固に守ってくれる人が見つかったわ。
墨を磨る音に、少しだけ異国の言葉の響きが混じって、書房を吹き抜けていきました。




