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「……高麗の通訳官、ですか。確かに、定期便として航路を固定するなら、こちらの言葉が分かるだけではなく、先方の『礼儀』や『商いの呼吸』を熟知した者が必要ね」


柴翊さいよく様のその一言は、極めて現実的で、隙のない提案でした。燕青おじさんの弟子の中にも、かつて北の地を渡り歩いて言葉を解する者はいますが、公的な交渉や壁欄渡へくらんとでの細かな調整を考えれば、その土地の血が流れている者の方が、相手方の懐に深く入り込める。


お嬢の独り言

「……燕青おじさんがいない間、この屋敷の機能は少しずつ、でも確実に『公』の色彩を帯びてきているわ。

柴翊様が仰る通り、高麗の通訳官をこちらで正式に採用し、華翊かよく商会の専属として置く。

それは単なる言葉の橋渡しではなく、あちらの国に対する、私たちの『敬意』の示し方でもあるのだから。


花陽かようちゃん、美林りびりん様。

今日から、臨安に留まっている高麗の寄留民や、市舶司しはくしに出入りする通訳たちの中から、信頼に足る人物をリストアップしましょう。


学識があるのはもちろん、この『少し特殊な集まり』の空気を乱さない、控えめでいて芯の強い人がいいわね」


陽ちゃんは、美林様の警護を続けながらも、新しい「仲間」が増えることに興味があるのか、少しだけ目を輝かせて頷きました。美林様も、南国とはまた違う北の文化に触れる機会を楽しみにしているご様子。


「……燕青おじさんの弟子たちには、その通訳官の『素性』を影から洗ってもらうわ。

表向きは穏やかな学者でも、裏で変な紐が付いていては、この青磁の輝きも曇ってしまうもの」


私は、採用のための条件を整理し、募集の布告を出すための書面を整え始めました。

竜泉窯の青磁を運ぶ船には、それにふさわしい「言葉」が必要。


「……おじさん。

あんたが熱を出しながら船に揺られている間に、ここには新しい言葉が響き始めそうよ。

青磁のような静かな気品を持った通訳官。

私たちがこれから繋いでいく航路に、ふさわしい人が見つかるといいけれど」

墨を磨る音に、少しだけ北の海風が混ざったような、そんな静かな午後。

私は、まだ見ぬ新しい「声」を待つことにしました。

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