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南国の果実を前にして。
「これは、長持ちしない、長持ちさせる方法、……半分、いえ、六割は挨拶回りに使いましょう。
市舶司の役人たち、それに例の高官の関係者。
新しい『華翊商会』の設立届を出す前に、この南国の陽光をそのまま閉じ込めたような果実を届けておく。
『これほど珍しいものを、わざわざ』。
そう思わせた瞬間に、書類の審査は半分終わったようなものよ。
代筆屋の知恵というよりは、この街で生き抜くための処世術ね。
燕青おじさんが熱病で寝込んでいる間に、商売の道筋は私が完璧に舗装しておいてあげる。
許可が下りるのを待つのではなく、向こうから『早く始めてくれ』と言わせるくらいの勢いでね」
私は、果実に添える短い挨拶文を一つ一つ、書き上げました。
相手の役職、好みを踏まえ、出過ぎず、しかし「華翊商会」の存在を強く印象付ける一筆。
印盤では、小大さんたちが倉庫の設計図を広げ、彩雲さんが商会の看板に使う鮮やかな紅い塗料を調合しています。
私たちの新しい『城(倉庫)』を建てるための楽しい時間を送って居ました。
燕青おじさん。
あんたが熱病の夢を見ている間に、危険な事をしなくても臨安の街にはもう、私たちの『華翊商会』を待ち望む空気が出来上がりつつあるわよ。




