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「……ああ、あのお料理のことね! 失礼したわ、点心の小籠包しょうろんぽうと聞き間違えてしまったけれど、東坡肉トンポーロウ……あの方、蘇東坡そとうぱ様が発明したと言われる、あのとろけるような豚の角煮のことね」


私は自分の筆を置き、お孫さんたちが持ってきた計画書をもう一度見つめ直しました。臨安はまさに、蘇東坡様がかつて知事として治め、あの美しい西湖せいこを整えたゆかりの地。


そこで東坡肉を看板にするというのは、これ以上ない「正道」にして「最強」の戦略だわ。


とろける秘伝、東坡肉トンポーロウの誘惑


「蓮華様、その通りです! お祖母様(顧大嫂)は、荒っぽい戦場飯だけでなく、じっくりと時間をかけて素材を活かす料理の真髄を、隠居後に極められたのです。この東坡肉こそ、我が『華顧飯店』の魂となります!」


お孫さんたちが熱く語るそのレシピには、梁山泊の豪快さと、臨安の洗練が見事に融合していました。


究極の東坡肉、

厳選された皮付きの豚三枚肉。それを柴翊様が手配してくれた極上の紹興酒と、倉庫にある「沈香」の香りを微かに移した特製の醤油で、数時間かけて煮込む。


箸を触れるだけで崩れるほどの柔らかさと、宝石のような照り。


**「華顧飯店」**は、一階を庶民が饅頭を買い求める活気ある場にし、二階を東坡肉を囲んで密談ができる高級個室にする。


私の文字で書かれた「お品書き」自体が、臨安の食通たちの間で蒐集されるような付加価値をつける。


お嬢の独り言

「……蘇東坡様といえば、流罪るざいになってもその地で美味しいものを食べて詩を詠むような、ある意味でおじさんたち以上に頑丈な精神の持ち主。


そのお料理を看板にするなら、ただ美味しいだけじゃダメ。食べた人が『明日もまた戦おう』と思えるような、力強い味じゃなきゃね。


柴翊さいよく様が調理人を手配してくださるなら、火加減の修行は万全。


あとは、私がこの『東坡肉』の伝説を、さらに美しく、あるいは毒っぽく臨安の街に広めるだけだわ。


『いいわ。共同経営、承諾するわよ。

ただし、お肉を縛る藺草いぐさの一本にまで、柴家の気品と顧家の誇りを込めなさい。


……陽ちゃん、あなたさっきから、よだれが零れそうよ?』」


かようちゃんの意気込み

陽ちゃんは真っ赤になって顔を上げましたが、その瞳は期待でキラキラ輝いています。


「ねえさま! 東坡肉なんて……想像しただけで、弓を引く力が倍増しそうですわ!

お店が始まったら、私は店の前で看板娘をしながら、つまみ食い……ではなく、お肉の鮮度をこの鋭い目で見守ります!」


お嬢の独り言

「『ふふ、頼もしいわね。

燕青おじさんが海から戻ってくる頃には、陽ちゃんの筋肉も、この東坡肉でさらに太くなっているかもしれないわ。


さあ、決済完了よ。

柴翊様にすぐお伝えして。


“臨安で一番熱くて甘美な、東坡肉の宴を始めましょう”ってね』」


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