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燕青おじさんが羅針盤150個と海図200枚を持って大海原へ消えるまでの、嵐のような一週間。


大潮の夜、消えぬ香りと家族の誓い。


「お嬢、時間だ。柴翊さいよくの旦那の部下たちが、運河の裏に船をつけたぜ」


外は、私たちの計画を隠すかのような土砂降りの雨。燕青おじさんは、南洋の宝物……沈香や象牙、そして真っ赤な蘇芳すおうが詰まった倉庫の鍵を、私の手にそっと握らせました。


お嬢の独り言

「……おじさんの手は、雨に濡れて驚くほど冷たい。

でも、その目は、羅針盤の針よりも真っ直ぐに私を見据えていた。

『おじさん。海図の隅に書いた“まじない”、忘れないでよ。行き詰まったら私の筆跡を思い出しなさい。あんたを正しい道に引き戻してあげるから』


『ああ、分かってるよ。……よう、お嬢を頼んだぜ。柴翊の旦那が用意してくれたあの家で、ちゃんと二人で飯を食って、俺の帰りを待ってろ』


陽ちゃんは、私の隣で雨に打たれながら、濡れた弓を抱えて力強く頷いた。


『燕青様、ご安心を! ねえさまの髪の毛一本、臨安の泥に触れさせはしませんわ。お父様(逢春)が戻る場所も、燕青様が戻る場所も、私たちが守り抜きます!』」


翊華印盤・留守番の日常

おじさんの船が闇に消えて数日。柴翊様が用意してくれた邸宅に、私たちは落ち着きました。


陽ちゃんが、庭の木々に「鈴」を仕掛け、風の音と侵入者の足音を聞き分ける。


柴翊様の部下たちが、表向きは使用人として、裏では「36群星」の盾として周囲を固める。


倉庫に残された**竜涎香りゅうぜんこう**の香りは、お嬢が作る「偽造文書」に、消えない気品と真実味を与えるための隠し味に。


赤色は、次の公文書を染めるために、彩雲さいうんさんが丁寧に煮出している。


お嬢の独り言

「『ねえさま、お茶が入りましたわ。……今日は倉庫から少しだけ分けてもらった沈香を焚いておきました。燕青様の匂いがすると、少しだけ、落ち着くでしょう?』


陽ちゃんが差し出してくれた菊花茶を飲みながら、私は机の上の白い便箋を見つめた。

おじさんがいない間、私はただ待つだけの娘じゃない。

柴翊様が守ろうとしているこの平和を、文字の力で盤石にするのが私の仕事。


燕青おじさん。

あんたが海の向こうで戦っている間に、私はこの臨安を、あんたにとって一番居心地のいい場所に作り変えておくわよ。

……だから、迷わず帰ってきなさいよね」

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