第四十四話「報告」
ある朝、私はダンクル氏に相談した。
「……少し体の調子が変なんですが」
「何が変だ」
「朝起きると少し気分が優れなくて、でも昼になると元気になります。三日ほど続いています」
ダンクル氏が腕を組んだ。
「……何を食べた」
「いつもと同じものです。ただ、匂いに敏感になった気がして——それが原因かもしれないかと」
ダンクル氏は長い沈黙の後、なぜかゆっくりと厨房の椅子に座った。
「……ルナ嬢」
「はい」
「……カイゼル様に、報告した方がいい」
「体の不調ですか? そんな大ごとにしなくても」
「大ごとです」
真剣な顔だった。
「……あの、どういういことですか?」
「……魔族の番は、魔力を分けます。その後、人間の体が魔力を受け入れると——変化が起こることがあります。朝の不調と、匂いへの感受性の変化は、その兆候の一つです」
「……え」
「……おそらく。子どもを、授かっておられます」
静寂。
「……え」
「また「え」ですか」
「……え、え?」
ダンクル氏は静かに立ち上がり、「先に私から報告します」と言って厨房を出た。
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その夜、カイゼル様が執務室から飛んで出てきた。
「……何回確認した」
「ダンクル氏は「確かです」と」
「……俺が直接聞く(医術師を呼ぶ)」
「カイゼル様、落ち着いて——」
「……これが落ち着いていられるか」
カイゼル様の耳が、赤くて。
目が、珍しく、泳いでいた。
「……ルナ」
「はい」
「……お前は、嬉しいか?」
私は少しだけ考えて、正直に答えた。
「……はい。とても、嬉しいです」
カイゼル様は一度、深く頷いた。
「……そうか。では、俺も、嬉しい」
第四十四話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
来ましたーーー!!!
カイゼル様の「これが落ち着いていられるか」……あんなに静かな方が、ここまで動揺するとは笑
でも「お前は嬉しいか?」を先に聞くのは、ちゃんとルナちゃんを気遣っているんですよね。
次回は、みんなへの報告回です!お楽しみに!
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