第四十話「新しい日常」
婚礼から三ヶ月が経った。
生活は——ほとんど変わらなかった。
「おはようございます、カイゼル様」
「……ルナ」
朝食の支度を終えると、カイゼル様が食堂に来る。
いただきますを言って、黙って食べる。
ただ——以前より、少しだけ。
「今日は何をする」
「東棟の庇が少し汚れているので、午前はそちらを。午後はダンクル氏と新メニューを試す予定です」
「……昼は一緒に食べよう」
「はい、喜んで」
以前は「昼は」と言われなかった。
昼にちゃんと食堂に来るようになったのも、最近のことだ。
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ゾルク様が執務室から顔を出して、廊下で私を呼び止めた。
「……ルナ嬢。少し相談がある」
「はい」
「……最近カイゼル様が、魔王軍の会議中にそわそわされているのだが……もしや毎日ルナ嬢の料理が楽しみで……」
「そうなんですか?」
「確認したら怖いので聞けていない。ただ……昼食だけは、絶対に定時に終わらせろと言われるようになった」
私はそれを聞いて、少しだけ笑った。
「……今日、少し豪華にしておきますね」
「頼んだ」
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夕方、中庭の薔薇を切って花瓶に挿していると、カイゼル様が来た。
「……何をしている」
「食卓に飾ろうかと」
「……誰かに頼めばいい」
「でも自分でやりたいので」
カイゼル様はそれを聞いて、少し間を置いてから、隣にしゃがんだ。
「……どれを選べばいい」
「……手伝ってくださるんですか?」
「……なんとなく」
私は嬉しくなって、一番綺麗に咲いた一輪を差し出した。
「これと——そこの少し開きかけたものと」
カイゼル様が、慣れない手つきで茎を持った。
そういう日常が——続いていく。
第四十話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
第40話まで!!
「昼食の定時に終わらせろ命令」のカイゼル様、完全にルナちゃん待ちですよね笑
そして薔薇を一緒に選ぼうとする不器用な優しさ……本当に愛おしい方になりましたよね。
次回からエピローグへ向かいます。引き続き、お楽しみに!
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