第三十九話「宴の夜」
婚礼の式が終わると——宴が始まった。
ダンクル氏が全力で準備した料理が、長テーブルを埋め尽くしていた。
竜族の炎が空を彩り、妖精族の光の粒が城内を流れる。
吸血鬼族が奏でる音楽は、人間界で聞いたどんなものとも違う、深みのある旋律だった。
私はカイゼル様の隣に座って、その全ての光景を見ていた。
「……料理はどうだ」
「ダンクル氏の腕前は本当に素晴らしいですね。このソースの深みは——」
「……自分が作った料理との比較をするな」
「そうですね。今日くらいはお客様でいます」
カイゼル様が小さく笑った。
ゾルク様が竜族の長老と腕を組んで歌っている。
クロウが台の上で踊っている(止める者はいない)。
「……こんな祭りができるとは思っていなかった」
カイゼル様が、静かに言った。
「どういうことですか?」
「……この城に人を集めて、笑い声がするとは。百年前には想像もしなかった」
私は彼の横顔を見た。
「……カイゼル様」
「なんだ」
「ありがとうございます。ここに居させてくれて」
少しの沈黙。
「……俺の方こそ、だ」
宴の灯りの中で、カイゼル様の口元が——本当に少しだけ、やわらかく揺れた。
第三十九話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
宴のシーン、楽しんでいただけましたか?
クロウさんが台の上で踊っているシーンは絶対入れたかった笑
「俺の方こそ、だ」のカイゼル様……本当に成長しましたよね。
次回から少しずつエピローグへ向かいます。お楽しみに!
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