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第三十五話「魔界式の婚礼について」

翌朝、ゾルク様が目を真っ赤にして廊下に立っていた。


「……おはようございます、ゾルク様。どうかされましたか?」


「……カイゼル様から聞いた」


「何をですか?」


「……誓いの儀を済ませたと」


「……ああ、はい。昨夜」


 ゾルク様がくしゃっと顔を歪めた。


「……よかった……。本当に……よかった……」


「泣いてらっしゃいますか?」


「泣いてない!! 目にゴミが入ったんだ!!」


---


 城のあちこちで、似たような反応が相次いだ。


 竜族の長老は「千年の悲願が……」と滝のような涙を流し。

 ダンクル氏は「ならば婚礼の宴の料理は俺が……」と燃えるような目をし。

 クロウは「ルナさんが嫁になるとは……俺ももう少し早く病気が治っていれば……」とグーで地面を殴り。


「……なんか申し訳ないですね」


「気にするな」


 カイゼル様は執務机から顔を上げずに言った。


「……魔界式の婚礼の準備を始める。何か希望はあるか」


「婚礼、ですか。私は魔界式を存じ上げないのですが……」


「……神殿式と同じような大がかりなものは、俺も好まない。ただ、城の者全員の前で——正式に誓いたい」


「……はい」


「……嫌か」


「嫌ではありません。嬉しいです」


 カイゼル様は少しだけ口の端を上げた。


「……では、ゾルクに任せる。あいつが楽しそうにしているので、好きにさせてやれ」


「よろしいんですか?」


「……一生に一度だ。盛大にやってもいい」


 廊下に出たら、ゾルク様が壁に向かって「婚礼の準備……婚礼の準備……どの酒を……料理は……」と呟きながらメモを取っている姿が見えた。


 この城が——好きだな、と、改めて思った。


第三十五話 完

お読みいただき、ありがとうございます!


ゾルク様の「目にゴミが入ったんだ!!」(号泣)最高でしたよね笑

クロウさんの「もう少し早く病気が治っていれば……」も笑いました。


カイゼル様の「一生に一度だ。盛大にやってもいい」なんて……本当に成長しましたよね。

次回は婚礼準備が本格始動します!お楽しみに!

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