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第三十四話「一生、傍にいてくれ」

翌日から、城の空気がまた少し変わった。


 カイゼル様が、以前より私に近いところにいることが増えた。

 廊下ですれ違う時に自然に足を止める。

 食事の時、いつもより話す。


 変化は小さいが——確かに、ある。


「……ゾルク様、カイゼル様は最近ご機嫌が良いように見えますが、何かあったんですか?」


 私が聞くと、ゾルク様は遠い目をした。


「……お前が聞くのか」


「はい」


「……知らない方が幸せかもしれんが。まあ——良い方向だとだけ言っておく」


---


 その夜、食事の後片付けを終えた私が庭を通ると、薔薇の前にカイゼル様がいた。


 月光の下で腕を組み、深紅の花を眺めている。

 私が近づくと、彼は振り返らずに言った。


「……来るのがわかった」


「そうですか?」


「……最近、足音でわかるようになった」


「……それは少し怖いですね」


「……そうか」


 でも口の端が、少し上がっていた。


 私は隣に立って、一緒に薔薇を見た。


「……ルナ」


「はい」


「……一生、傍にいてくれ」


 今度は、はっきりとした言葉だった。


 昨日の「好きだ」より、もっと直接的な、もっと重い言葉。


 私は少しの間、黙って考えた。


 「一生」。

 魔族の一生は、人間の何倍も長い。

 私の命の間では到底終わらない時間。


 でも——。


「はい」


 私は、はっきりと答えた。


「私がいられる限り、ずっと傍にいます」


 カイゼル様が、私の方を向いた。


「……それでは短い」


「……では、どうしたら」


「……俺の魔力を分けてやる。寿命が伸びる。ただし、契約が必要だ」


「……魔族の寿命ですか?」


「……嫌か?」


「いいえ。嬉しいです」


 カイゼル様は、ゆっくりと私の手を取った。


「……では、誓え。俺の傍から離れないと」


「誓います」


 二人の間に、淡い魔力光が流れた。


 薔薇が、一斉にほころんだ。


第三十四話 完

お読みいただき、ありがとうございます!


「一生、傍にいてくれ」——カイゼル様、ついに言い切りました!!!

そして魔力を分けて寿命を伸ばすという……これは実質「永遠を共に」ということですよね。


二人の誓いと薔薇が同時にほころぶシーン、書いていて最高に幸せでした。

次回はついに式の話が登場します!お楽しみに!

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