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第三十二話「魔界中に広める」

カイゼル様は、魔界中の種族の長を城に集めた。


 定例の軍事会議を名目にしていたが、その帰りがけに、こんな一言を加えた。


「……今日から、余の番の存在を公式に認める。名はルナ・アーシェル。人間だが、余が選んだ。文句がある者は出ろ」


 大広間が静まり返った。


 竜族の長老が、ゆっくりと手を挙げた。


「……カイゼル陛下。その者は、先日の聖泉を蘇らせた方では?」


「そうだ」


「……千年ぶりの聖泉を復活させた方が、魔王の番——これは我ら魔界全体にとって、慶事(けいじ)です」


 長老が頭を下げた。

 それに続いて、一人、また一人と頭を下げていく。


「……(ちなみに)その方が作った料理を先日いただいたのですが……」


 クロウが遠慮がちに手を挙げた。


「我が族の百年来の持病が治りました」


「……なんで今言う」


「タイミングを伺っていました」


 大広間が、爆笑に包まれた。


---


 その話を後から聞いた私は、頭を抱えた。


「……カイゼル様、なぜ黙っていたんですか」


「言っても信じないかと思って」


「いや黙っておいても困りましたが!?」


「……まあ、結果的に全員が賛成したので問題ない」


 カイゼル様は珍しく、少し得意そうにしていた。


「……魔界中に認められた。これでお前を奪いに来る者はいない」


「……それが目的でしたか」


「……まあな」


 私は少し呆れながら、でも嬉しくて笑った。


 「守られている」という言葉の意味を——この人のそばで初めて、ちゃんと理解した気がした。


第三十二話 完

お読みいただき、ありがとうございます!


クロウさんの「百年来の持病が治った(今更)」は笑うポイントとして書きましたが……思った以上に好評でよかったです笑


カイゼル様の「これでお前を奪いに来る者はいない」——すごく不器用な独占欲ですよね。大好きです。

次回もお楽しみに!ブックマーク・評価お待ちしています✨

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