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第二十五話「ルナが知らない自分のこと」

カイゼル様の使節がルーセル王国から戻ってきたのは、一週間後のことだった。


 報告の内容が、執務室で交わされるのを、私が聞けたのは——実は偶然だった。


 廊下を掃除しながら扉の近くを通った時、中から声が聞こえた。


「…結界石の魔力測定の結果、判明したことをご報告します」


「話せ」


「……結界石の核に、長年に渡って特殊な浄化魔力が蓄積されていた形跡があります。その魔力は人間のものですが——型が、光神殿のどの聖女の物とも一致しない特異な種類でした」


「…では」


「おそらく、追放されたルナ・アーシェル女性の魔力です。神殿側の記録では『能力なし』として扱われていましたが……実態は、歴代に例を見ない高位の浄化系を持つ特別な聖女だったと判断されます」


 私は掃除の手を止めた。


「……高位の、聖女」


 自分で口に出して、少し間抜けな気持ちになった。


 掃除をすることが、何か特別な「魔力の発現」だったということ?


「……私が掃除をするのが、普通より少し好きというだけで……」


「違う」


 扉が開いた。


 カイゼル様が立っていた。


「…聞いていたのか」


「すみません、通りかかって……」


「謝るな」


 彼は廊下に出てきて、私の前に立った。


「……貴様は、十年間、神殿全体の浄化結界を一人で支え続けていた。それが正式に確認された」


「……」


「誰も認めなかっただけで、お前は——最高位の聖女()《・》《・》《・》《・》だったのだ」


 静かな廊下に、その言葉が落ちた。


 私は何も言えなかった。

 雑巾を持ったまま、立ち尽くしていた。


「……それを知って、どう感じる」


「……正直。あまりピンとこないです」


 カイゼル様が少し苦笑したような顔をした。


「……そうか。貴様らしい」


「ただ……掃除が好きで、料理が好きで、ここに居られることが嬉しくて。それは本物です」


「……わかっている」


 彼は私の頭に、一瞬だけそっと手を置いた。


「……それで十分だ」


第二十五話 完

お読みいただき、ありがとうございます!


ルナちゃんが「最高位の聖女」と正式に判明しました!!

本人が全くピンと来ていないのが最大のポイントですよね笑


カイゼル様の頭ぽんぽん……シンプルな仕草なのに、破壊力が高すぎます。

次回もお楽しみに!ブックマーク・評価お待ちしています✨

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