第二十四話「神殿の崩壊が始まる」
ルーセル王国の貴族から、魔王城に密使が届いた。
内容は——「神殿を調査してほしい」という、異例の依頼だった。
「……人間の貴族が、魔王に調査を依頼するとは珍しい」
カイゼル様は密書を読みながら、眉をわずかに上げた。
「……どういうことですか?」
「결界の劣化以来、王都で疫病が出始めた。神殿はそれを隠蔽しており、正規の調査が通じないため、外部の力を借りたいということだ」
私は息を呑んだ。
「疫病が……」
「ああ。だがそれよりも」
カイゼル様は書状を机に置き、私を真っ直ぐに見た。
「……お前が追放されたのは、グリフィス長官の命令だったな」
「……はい」
「……お前が維持していた浄化結界を失った神殿は、今それが機能していないために疫病を防げない。長官はそのことを隠蔽しながら、原因をいまだ把握できていないらしい」
「……つまり」
「……貴様を追放したことで、神殿自体が機能不全を起こし始めているということだ」
静寂。
「……私は何も、特別なことはしていなかっただけなのですが」
「それが特別だったのだ」
カイゼル様はそう言って立ち上がった。
「ゾルク。ルーセル王国への使節を立てる。状況の確認と、医薬品の提供を名目に」
「はっ」
「……ルナ」
「はい」
「お前は何もしなくていい。ただ……ここにいろ」
それだけ言って、カイゼル様は執務室を出た。
私は窓の外を見た。
遠くの空に、人間界の方角がある。
私が離れたことで、誰かが困っているなら。
せめて、カイゼル様の助けになれることが、あればいいと思った。
第二十四話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
神殿の腐敗がいよいよ自分に返ってきましたね。
ルナちゃんが「いるだけで」結界を守っていたなんて……本人は全くその自覚がなかったのが辛いです。
カイゼル様の「ここにいろ」という言葉に、深い意味がある気がしますよね。
次回もお楽しみに!ブックマーク・評価お待ちしています✨




