第二十三話「テオの没落、始まる」
人間界からの報告は、その後も続いて入ってきた。
カイゼル様のスパイ網は、想像以上に広かった。
彼はそれを「魔界の平和維持のための情報収集」と言っていたが、実のところ私の元婚約者の動向もモニタリングしていたようだ。
「……テオドール・グラメンについて」
ある夜、カイゼル様が報告書を机に置いた。
「彼の商売が、次々と失敗しているようだ」
「……テオが?」
「ああ。まず投資した鉱山が枯れた。次に立ち上げた交易業が不正発覚で閉鎖。今は神殿の信用を使って貴族向けの寄付集めをしているが、神殿の評判自体が落ちてきているため、集まりが悪い」
私は少し考えた。
「……彼が神殿に依存する生き方をしていたから、神殿の評判と連動して落ちていく、ということでしょうか」
「そういうことだ」
「……それは」
正直、憐れに思う気持ちも少しあった。
でも——不正を行い、人を傷つけながら積み上げてきたものが崩れていくのは、自業自得でもある。
「……カイゼル様は、なぜ私に教えてくださるのですか?」
「…………お前が知っておくべきと思ったからだ」
「私のために調べてくれたんですか?」
「……そうではない。情報として有用なだけだ」
目が泳いでいる。
「……ありがとうございます」
「礼はいらん」
カイゼル様は書類を片付けながら言った。
「……ただ。お前が昔のことで苦しんでいるなら、それはもう終わっていくと、知っておけば良い」
私は胸のあたりが温かくなるのを感じた。
カイゼル様は不器用で、正面から優しくするのが苦手だけど。
こういう形で、ちゃんと私のことを思ってくれている。
第二十三話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
テオの没落が始まりました。でもこれはまだ序章……。
カイゼル様のさりげない優しさ、伝わりましたか?「お前が知っておくべき」という言い方が彼らしくて大好きです。
次回は神殿の問題が本格化してきます。お楽しみに!
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