第二十一話「料理番の申し込み」
カイゼル様と「番」になることを話してから、三日が過ぎた。
お互い、日常的な会話は変わらない。
でも、なんとなく柔らかい空気が漂っている。
「ルナ」
夕食後、カイゼル様に呼ばれた。
「はい」
「……前に、魔族の求愛について読んだと言っていたな」
「はい。ゾルク様からいただいた本で」
「その本には……魔族は番を申し込む時、相手に贈り物をするとあった」
「はい、そう書いてありました」
「……では。貴様に聞く」
カイゼル様は、威厳ある顔で私を見下ろした。
「俺の番に——なってくれるか」
私はぱちぱちと瞬いた。
「……あの、三日前にそのお話をして、私は「はい」とお答えしたと思うのですが」
「……もう一度、正式な申し込みをしている」
「そうなんですね」
「……是非を答えよ」
「はい、もちろん喜んで」
「……わかった」
カイゼル様はホッとしたような顔をして——もう一度だけ口を開いた。
「では、贈り物をする。何が欲しい」
「えっ。そんな、何もお構いなく——」
「魔族の習わしだ。受け取れ」
いつになく真剣な顔でそう言うので、私は少し考えた。
「……では、お願いがあります」
「なんでも言え」
「魔界の厨房の棚を、もう一段増やしてほしいです。食材が増えてきて、収納が」
長い沈黙。
「……それだけか」
「それが一番嬉しいです!」
ゾルク様が後ろで何かを言っていたが、カイゼル様に遮られた。
「……わかった。棚を増やす」
「ありがとうございます!!」
私が喜んでいると、ゾルク様がふらふらと廊下に出て行き、壁に額をついて「番の申し込みへの返答が料理棚……俺は千年生きてきたが初めて聞いた……」と呟いていた。
第二十一話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
ルナちゃんへの贈り物が「棚」……でも彼女的には最高のプレゼントなんですよね笑
ゾルク様が壁に額をつける姿、可愛すぎませんか。
次回はいよいよ人間界からの知らせが届きます。物語が少し動き始めます!
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