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第二十話「夕暮れと誓い」

城の東側に、小さな塔がある。


 本来は物見の役割を果たす場所らしいが、ゾルク様曰く「最近は誰も使っていない」という。


 私はそこを勝手に自分のお気に入りの場所にしていた。

 夕暮れ時に登ると、魔界の地平線が赤と紫の絶景を見せてくれる。


 その日も、一人で上に登って外を眺めていると——足音が聞こえた。


「……また、ここにいたか」


 カイゼル様だった。


「おいでになったんですか?」


「……ゾルクに聞いた」


「あの方、口が軽いですね」


「……同感だ」


 カイゼル様は隣に立って、同じ地平線を見た。


 夕暮れの光が、彼の黒い髪に深紅の色を混ぜている。


 しばらく黙っていてから、カイゼル様は口を開いた。


「……話がある」


「はい」


「……魔族の求愛について読んだと言っていたな」


「……はい」


「……俺は」


 長い間、彼は言葉を選んでいた。


「……貴様を、俺の番にしたいと思っている」


 夕風が吹いた。


 私はしばらく、その言葉を飲み込もうとした。


「……つまり、伴侶、ということでしょうか」


「……そうだ」


「……それは」


 私は少し俯いて、手を組んだ。


「——嬉しいです。でも……私は人間ですよ? 魔族の番に、なれるものでしょうか」


「……そこは問題ない。調べた」


「調べたんですか!?」


「……うるさい」


 カイゼル様の頬が赤い。


 私は笑いそうになるのを抑えて、しっかりと彼の目を見た。


「……返事を、聞かせてもらえますか?」


 深呼吸を一つ。


「……はい。私でよければ、ぜひ」


 その瞬間——カイゼル様の表情が、私が見た中で一番やわらかくなった。


「……そうか」


 たったそれだけ。


 でも、空がその時ちょうど一番赤くなった。


第二十話 完

お読みいただき、ありがとうございます!


第20話!番の申し込み、成功しましたーーー!!

ついにこの二人が一歩踏み出しました。


不器用すぎるカイゼル様の「調べた」という一言が、全ての愛情を表していると思います笑


次回からは、さらにキュンとする場面が続きます。油断しないでください笑

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