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ネタバラし


 意識が戻ると、私は翔君の背中に抱き着いていた


 一瞬悲鳴を上げそうになったが、それはこらえた。

 

 「んぅん?」

 

 こらえたのはいいが、抱き着く力を強めてしまったので結局、翔君は起きた。

 

 私の覚悟は決まった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺は、何かに強く抱き着かれて、目が覚めた。

 

 「んぅん?」

 俺は、イネラに抱き着いて寝たのに、なんでイネラに抱き着かれてるんだ?

 目を開けると、イネラは俺に抱きしめられていたが、イネラは俺を抱きしめていなかった。


 え、じゃあ誰だ?

 俺は気になって後ろを見るために、抱き枕(イネラ)を手放し寝がえりをうった。

 

 すると、そこにはクラスにいた女子だった。小野 栞。


 確かに、こいつには「 お前は一番、逃げちゃいけないんだ。むしろ逃げること以上のことをしろ。」とは書いたけど、|本当に逃げること以上のこと《後を追って死ぬ》をするとは。

 

 そして目が合った。その瞬間、栞は俺に抱えていたであろう気持ちを俺に伝えてきた。


 「えっと……その、ずっとあなたのことが好きでし、っぷ!?」


 大声を出して言いそうだったので、その口を急いで手で塞いだ。

 

 「今寝てる奴いるんだから静かにしてくれ」

 そう、小声で伝えて、栞が頷いたのを確認してから手をそっと放した。


 「気持ちだけ受け取っておくよ。まぁお前の事は嫌いじゃないし。」

 「え…でも、卒業式で……。」

 「あれは便宜上だよ。どうせ言わされたんだろ?しかも見られた状態で。演技すんの大変だったんだから。」

 「卒業式で泣いたのも私なんだけど……。」

 「え、あれお前?顔まではそこまで詳しく見えなかったから気付かなかった。あれ(事実)をぶっちゃけるので、緊張感が意外と高くなってたみたいで視界がブレブレだったんだ。」

 「私の事、本当に……嫌いじゃ……ない?」

 「だからさっき言ったじゃんか、嫌いじゃない。って。そんなに俺に嫌われていたいの?」

 「ううん。」


 栞はそう言って、俺をより一層強く抱きしめ、泣き始めた。


 俺、どうするべきなの?


 俺は、困惑しながらも栞の頭を恐る恐る撫でた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 あれから、イネラが起きて色々大変だった。

 

 一番大変だったのは、栞に「なんでこの子は制服を着ているのかな?」と笑顔で詰め寄られたことだ。


 そんで今は、イネラに落ち着いてもらって、栞と二人きりにさせてもらっている。

 今はリビングで、向かい合っている。


 「質問!なんであなたは、血で文字を書いたんですか?」

 「返答!それは血ではありません!血で書いたら普通垂れます!」


 とかいう先ほどの、(俺一人の)弁論大会を開いたままの、おかしいテンションのまま俺と栞の質問返しが始まった。


 この二人が、心臓に刃物刺して自殺した、なんて誰かに話しても誰も信じないんじゃないかな。

 

 「質問!それでは、あれは何で書いたのですか?」

 「返答!普通にアクリル絵の具です!赤を薄めずに使いました!」

 「質問!なぜあの遺書はあんなに具体的なのですか?」

 「返答!よく考えれば普通に予想できます!」

 「質問!「卒業おめでとう」などの飾りはどこに捨てたのですか!」

 「返答!職員室に文字を「卒業」の「卒」を「失」にして、「失業おめでとう」にして華々しく飾りました!」

 「質問!あの手紙の内容は本当ですか!」

 「返答!それっぽく書いた嘘です!」

 「質問!私へ書いた手紙も嘘ですか!」

 「返答!気まぐれです!」

 「質問!あの子は誰ですか!」

 「返答!俺の奴隷です!イネラって言います!」

 

 そこで、一瞬の間が生じた。

 「え?今なんて?」

 「あ、いや。そのままの意味です。」

 「イネラちゃん、ちょっと来てくれる?」

 

 栞がイネラを呼びに行った。笑顔で。

 あ、ヤバい。これはヤバい。怒ってらっしゃる。栞が笑顔って大体怒ってるんだよ。

 

 「何でしょう。」

 「ちょっと、自己紹介をしてくれないかしら。」

 「はい?まぁ、いいですが。私は、カケル様の奴隷でイネラといいます。」

 

 栞は、イネラの自己紹介が終わると、こちらに笑顔で振り返った。

 

 「ねぇ翔君。どういうこと?イネラちゃんの名前よりも、奴隷の方が優先って、どういうこと?」

 

 これは埒があかないわ。


 「いい加減にしろよ。ここは異世界なんだぞ。人権なんてあったもんじゃないんだ。あんまりあーだこーだ言うと、元の世界に返すぞ。」


 さっきの苦笑いとは打って変わって、真面目な表情で栞にそう言った。

 すると、栞も落ち着いた。

 分かってくれたようだ。

 

 すると、何やら外が騒がしかった。


 「…やせ!」

 「「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」」


 そして、なんか熱くなってきた。

 

 これはあれだ。俺が寝てた時にゲリラ豪雨止んで、次の騎士達も到着して、俺の家が燃やされた奴だ。


 「さてと。『転送』」

 「え?今何したの?」

 「あー、なんか邪魔な人とか火をどっかにやった。どこに行ったかは俺も知らね。」

 「え、その力ってどうなってるの?」

 「俺が口に出したときに発動するよ。あ、そうだ。『俺はどんな状態でも喋れるし、この能力はどんな状態でも発動する』これで良し。」


 なんか腹減ってきたな。


 「さー、飯食お!飯!なんか食いたいものある?」

 「うーん。さっき死んだばっかりだしなぁ、あっさりしたものでいいかな。」

 「……なんか、字面だけで見ると凄いことになってるぞそれ。」

 「私もあっさりしたものが食べたいですね。特に動いたわけでもないですし。」

 「じゃ海鮮丼だな。『海鮮丼並盛二つ、大盛り一つ』。」

 

 目の前の机に、結構具が多い海鮮丼が合計3つ乗っかった。

 鮪の赤身、トロ、中トロ、大トロ、サーモン、鯛、イクラ、ウニ、エビ、カニ、頂上にワサビだ。

 醤油は、机の上に乗っていた。

 箸は、律義に箸置きと共に置かれていた。

 

 これを元の世界で食べるとしたら、いくらかかるだろうか。

 

 「いただきます。」

 「いたダきマす。」

 「いっただきまーす!」


 イネラのいただきますは、やっぱりちょっとぎこちない。

 栞のいただきますは、元気いっぱいだった。目の前の海鮮丼が美味しそうな分もあるのだろうが。


 まずは醤油を掛けずに一口。

 おかしいだろこれ。旨いにも程がある。

 赤身が甘い以上に、ご飯がちゃんと甘い。寿司酢のバランスが丁度いい。


 期待しながら、中トロをご飯と共に、口に放り込んだ。

 「あははははは!旨いにも限度があるって!」

 おかしい位旨い。

 中トロの油がしっとりとしていて、ご飯と反発していない。

 


 正直、ここからは幸せ過ぎて記憶に残ってない。

 ただ、今まで食ってきた刺身とかは、完全に冷凍食品となんら変わりなかった。


 


……なんか、もう家に火付けようとした人がかわいそうで仕方ない。

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