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moderato.  作者: 奏多
49/56

#49 力

「あれ、すいません、変だな、俺……これ汗ですからっ」




慌てて私に背を向け、必死で平静を装う。




無意味だって、わかってんのに。




私が気づいてないとでも思ってるの?




「…イマドキ、女子中学生でももうちょいマシな嘘つくよ」




こっちに背を向けたままの優也に近づき、後ろから抱きしめた。




「かっ、香帆さん!?」


「ごめんね……実は、優也が本当は指揮者になりたかったの、知ってるの」


「え…?」


「この曲弾かせたらきっとわかると思うって言われて……本当にごめんなさい!私、すごい無神経だった………」




そっと背中から離れ、優也の前に回り込む。




優也の目はやはり、涙で濡れていた。




いつも気丈で慰めてくれる優也が、私の前でこんな風な顔を見せたのは、これで二回目だ。




「優也に、もう絶対こんな顔させないって、前に誓ったのに……私、ほんとに何やってんだろぅ………」


「香帆さんは全然悪くないです!俺が勝手に………」


「………よかったら、何があったのか話してくれないかな…。私………優也の力になりたぃよ…?」




顔を覗きこみ、優也の目を見つめる。




私は音大生でもないし、指揮者志望でもない。




役に立てることなんて、正直なぃかもしれない。




わかったような口きくな、とか言われても仕方ない。




でも、それでも………




優也の力になりたいって、本気でそう思った。




今まで、学校でも職場でも、周りの人は皆自分の敵になる、と思ってほとんど関わろうとしてなかった。




そんな私が、ほんの少しずつだけど周りと溶け込もうと思えたのは、優也の優しさがあったから。




優也………




「私、何にも言えないかもしれない。でも、優也だけ苦しんでるなんて、そんなの嫌だよ…!」




自分でも何言ってるのかわからなくなってきた。




言葉では表せないけど、伝わって………!










「………すっごいヘビーになっちゃいますよ…?」




優也がやっと顔をあげた。




「全然平気。むしろライトだったら反応に困る」




そう言うと、優也は少し微笑んで私の手をそっと掴んだ。




「今から話すことを、香帆さんも背負う必要は全くないからね?」




そんな前置きとともに、優也はゆっくり口を開いた―――……。

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