話したくない過去、新聞部のインタビュー
翌日。
雪乃は用事があるというので、先に学校に行った。
だから、俺はとりあえず一人で学校に行く。
「じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい、昴。」
俺は玄関を出て、学校へと歩き出した。が・・
「あっ・・・昴様。」
「おっ・・・紅葉。」
玄関を出て、30秒足らず、俺は懐かしい顔にあった。紺のショートヘア、赤い目、そして、俺を様付けで呼ぶ美少女、おれの中等部時代の後輩、紅月紅葉だ。
「あのさ、紅葉、俺を様付けするのやめてもらえないかな、どうも、俺、様付けされるのは苦手なんだ。」
「いえ、それはなりません。昴様は私の命の恩人ですから。」
そう、俺は一応、紅葉の命の恩人?だ。
二年前、車で引かれそうだった紅葉を助けたことがあった。それが、俺と紅葉の出会いだった。それから、紅葉が頻繁に俺に近づいてきた。そして、俺も助けてもらったこともある。紅葉を助けた当時、俺はある事情で恋人と別れ、その事情で女性に対し、俺が近づいたら、酷い目にあうと思い込み、女性を避けていた。それでも、紅葉はしつこくつきまとってきた。仕方なく事情を話した。さらに紅葉は俺の心の傷を取り除き、今では、普通に女性と話せるようになった。紅葉がいなかったら、今の俺はなかったと思う。だから、俺にとって、紅葉は恩人なんだ。まあ、とにかく、紅葉のおかげで、今に至っている。
「なあ、紅葉、お前、何部に入るつもりなんだ?」
「まあ、結果も出しているので、柔道部に。」
「そういえば、紅葉は去年、全国大会ベスト8だったな」
「あれ、ご存じだったんですね。でも、どうして」
「ああ、それはな、去年、俺らも近くの会場で、全国大会があったからな。団体戦でだけど。それで、大会後の次の日の自由行動の日に紅葉の姿を見かけたんで見に行ったんだよ。」
「えっ、本当ですか!でしたら、顔ぐらい見せてくれてもよかったのに。」
「いや、お前、負けた後泣いてたからな、あまり、声をかけるのも悪いと思ってさ。」
「そうですか・・私はそんなの気にしないのに・・むしろ、私としては、昴様が声をかけて下さった方が元気が出たかもしれない・・」
「紅葉、何かいったか?」
「い、いいえ、何も。」
そして、紅葉と話しているうちに学校へとたどり着く。
掲示板に人が集まっていた。
「昴様、掲示板の方が騒がしいですね。」
「ああ、そうだな、多分、学園新聞だろうな。この学園の新聞は人気だからな。でも、俺は正直、あんま、好きじゃないな。」
「何故です?」
「あの新聞、結構、生徒のプライベートまでネタとして、取り上げるからな。それに、俺は生徒会だし、対象にされやすいからな。」
「大変ですね、昴様も。新聞の人達は、どんなことを聞いて来るんですか?」
「うーん、なんていったらいいんだ・・・あっ、そういえば、朝、新聞部の取材にいくんだった。紅葉も来るか?実際に見てもらった方が早いからな。」
「じゃあ、ぜひ、お供させていただきます。」
それから、俺と紅葉は生徒会室に向かう。扉を開けると、伏見が取材を受けていた。
「次は、会計、伏見絢香さんです。よろしくお願いします。」
「ああ、よろしくな。」
「はい、では質問を始めます。あなたの好きな漫画はなんですか。」
「おっ、いきなりマニアックな質問だな。」
「はい、伏見さんには結構マニアックなことを聞きたいって人が多いんですよ。」
「へえー、じゃあ、答えるか、最初の質問に。私の好きな漫画はもちろん、メジ○ーだ。」
「おお、まさかの熱血野球漫画ですか。」
「私は熱血系が好きだからな。」
「おお、噂どおりの熱血ッぷり。じゃあ、次の質問です。生徒会副会長、黒金昴さんと付き合ってるって本当ですか?」
「なっ・・」
この質問には俺も驚いた。
「昴様、聞いてませんよ、私は!」
なんか紅葉は怒っている。
「いや、紅葉、俺は別に誰とも付き合ってない。」
「ホントですか・・?」
「ああ、ホントだ。」
「じゃあ、信じます。」
紅葉はしぶしぶ納得してくれたようだ。
「私は、黒金と付き合ってる覚えはねえ。あいつとはただの友達だ。」
伏見も俺との交際を否定した。
「伏見さん、じゃあ、これはなんでしょうね?」
新聞部の部員が伏見に何か叩きつけてきた。俺のいる位置からは見えなかった。
「いや、あの、それはその・・・」
伏見は何故か、らしくもなく、焦っていて、顔も赤くなっていた。
そして、インタビューを投げ出して、どこかにいってしまった。
「伏見さんがどこかにいってしまったので、次に行きたいと思います。次は、生徒会副会長で、私の友人の黒金昴君です。」
「おっ、頑張ってるな、清隆。」
「おう、今日はよろしくな、昴。」
インタビューをしていたのは、俺のもう一人の親友、澤村清隆だ。
「では、質問始めます。」
清隆は相変わらず敬語でインタビューを始めた。
「あなたの好きな小説はなんですか?」
「あー、うん、Fate/◯eroだな。」
「おっ、ライトノベルですか。まあ、私は知ってましたが。で、他には。」
「うーん、そうだな・・・ソード・◯◯◯・オンラインかな。」
「おお、また、ライトノベル。しかし、さっきのとは、バトルすることしか共通点がない。まあ、これも知ってましたが。昴さんは、本の内容のジャンルとかにはこだわらないんですか?」
「うーん、まあな。バトルものも、恋愛ものも、ギャグ系でも、面白いければ読む。」
「そうですか、では、次の質問。昴さんと会計の伏見さんが付き合ってるって本当ですか?」
「それなら、さっき、伏見が答えただろ、俺と伏見は付き合ってない!」
「・・・・本当にそう言い切れますかな?」
清隆は俺にある写真を見せてきた。
その写真は衝撃のものだった。
写っているのは俺と伏見。しかも、伏見が俺にあーんをしているものだった。おそらく、昨日のものだ。見られていたのか。
「うっ、それは・・」
「どうです、これを見てもまだ、反論しますか?」
「ああ、これにはわけがあるんだ。詳しくはハッピーキャリーのマスターにでも聞いてくれ。」
「・・・わかりました。この質問は保留にします。」
「ふうー。」
「では、次の質問です。この学園でも、五本の指に入る美少女、桐谷和春さんと付き合ってたって本当ですか?」
「・・・・ああ・・・」
俺はこの質問にはあまり触れたくなく、暗く答えた。桐谷和春というのは、俺の元恋人の名前だ。俺が傷つけてしまった人物。そして、ついに俺が一番触れたくない質問が来た。
「では、桐谷和春さんと別れたのは何故ですか?」
俺はこの質問には答えたくない。思い出してしまいそうだったから。あの残酷な出来事を。和春を傷つけたあの時の自分の愚かさを。
俺はこんな質問をする新聞部が憎く感じた。
だから、俺はひとつだけ言った。
「・・・・どうして、そんな質問をするんだ、清隆。どうせ、新聞部の部長の命令だと思うが。新聞部はそんなに人の事に首を突っ込むのが好きなのか?人の過去を無理矢理聞いて楽しいか?」
俺は新聞部の怒りをすべて清隆にぶつけた。悪いと思っている。悪いのは、新聞部部長、御堂千鶴だというのに。でも、怒りをぶつけられずにはいられなかったんだ。
俺はその後、インタビューを放棄して、生徒会室を後にした。紅葉も無視して。




