俺たちの第二ラウンド
「じゃあな、伏見。俺、寄ってくところがあるから。」
「どこに寄ってくんだ?」
「・・・心が落ち着くところだ。」
「なんだそれ?」
「気になるか?」
「うん、まあ、気になるかな。」
じゃあ、着いて来い!」
俺はある場所に伏見を連れていった。
連れていったのは、学校だ。
「なあ、黒金、心が落ち着く場所って、学校かよ。」
「うん、まあ、そうだな。目的地はもっと先だけど。」
「まあ、いいや。目的地まで、連れていってくれ。」
「ああ。」
俺と伏見は教師たちの見回りルートを避け、屋上まで向かった。
「ああ、なるほどな。黒金が言ってる心が落ち着くところっていうのは、ここのことか。」
「なんだ、伏見。その言い方はまるで、俺がよくここに来てることを前から知っていたみたいだぞ。」
「ああ、知っていたさ。お前がほぼ毎日のように屋上に来てるのは、ある特定の場所では有名だぜ。まあ、誰も何も言わないけどな。」
「そうだったのか・・」
「なあ、黒金。」
「なんだ?」
「星見るのって、面白いか?」
「・・・面白いから星を見てるんじゃない。」
「えっ⁉」
「星空を見るとさ、俺の悩みの数なんて、この星空にある星の数に比べれば大したことないって思えるんだ。それに俺の悩みなんて、この空に比べれば小さいことだって思える。 」
「そっか・・で、黒金は悩んでいることがあるのか。」
「それは人間なんだから、悩みの一つや二つあるだろ。」
「まあ、そうだな。で、どんな悩みなんだ?」
「教えない。」
「そうか。言いたくないならいいや。」
それから、俺たちは長々と星を見た。
「・・・・」
「・・・・」
そう、ただ無言で。
しばらくして、俺も星を見飽きて、そろそろ帰ろうと思ってバックを持って、その場から立ち上がると、
「ZZZ・・・」
伏見はその場で寝ていた。さすがにほうっておくわけにもいかないので、俺はきていたブレザーを伏見にかけて、俺は伏見が目を覚ますのを待った。だが、いつまでも待ってくれるほど現実は甘くなかった。階段を登ってくる足音、俺は見回りの教師かと思い、身構えてしまう。しかし、やって来たのは・・
「あっ、黒金君!」
「ほっ、大鳶か。」
足音の正体は大鳶だった。
「黒金君、なんで身構えているの?」
「いや、先生達がここに来るんじゃないかと思ってな。」
「そっか。で、伏見さんがいるみたいだけど、もしかして、一緒に来たの?」
「うん、まあな。」
「もしかして、黒金君と伏見さんって、付き合ってるの?」
「い、いや、違うぞ。」
俺は予想もしていなかった問いかけに焦ってしまった。
「へえー、怪しいなあ?」
大鳶は俺の言葉を疑っているようだ。
しかし、その瞬間。
床が崩壊、俺は奈落の底に突き落とされる。
「イテッ・・」
俺は星空の異空間、「魔法使いたちの楽園」に転送される。
「えっ、黒金君?」
「大鳶・・・」
そこには、何故か大鳶がいた。
「もしかして、大鳶も魔法使いなのか?」
「う、うん、そうみたい。魔法は使えないけど。黒金君も魔法使いなんだよね。」
「ああ。」
「ねえ、黒金君、私を殺すの?」
「えっ・・」
思いがけない質問であったが、考えてみれば当然とも言える質問に黙りこんでしまう。
考えてみれば、魔法の使えない魔法使いはこの闘いにおいて絶好のかもなのだ。だが、俺は無抵抗の相手と戦うつもりも殺すつもりもない。
「・・いや、俺は大鳶を殺したりしない。俺が闘うのは、俺やその仲間を攻撃してきた奴だけだ。無抵抗の相手に手を出したりしねえよ。それにできれば、誰も犠牲にせずにこのくだらない闘いを終わらせたい。」
「そっか、良かったあ。」
俺の言葉を聞き、大鳶は安心したようだ。
「そういえば、大鳶、お前、今まで、魔法使えないのにどうやって生き残って来たんだ?」
俺は一番気になっていた。この闘いに参加している魔法使いたちにとって、一番のかもであるはずの大鳶が今まで生き残れたのか、今まで攻撃されることはなかったのか、ただただ気になった。
「それは・・今まで私は他の魔法使いと一度も出会わなかったんだよ。」
「えっ⁉」
マジか、こいつ。運が良すぎだろ。
俺はそう思わずにはいられなかった。だけど、納得がいった。魔法使いと出会わなかったら、闘わずに済むのだから。
「黒金、それに、大鳶・・」
という声が聞こえる。
この世には「三度目の正直」という言葉が存在する。今回は三度目の闘い。大鳶もとうとう、出会ってしまったのだ、魔法使いに。
俺たちの前に現れたのは、東雲だった。
「東雲・・・」
「黒金・・・」
俺と東雲はお互いの存在を確かめる。闘いの予感。
「大鳶、下がってろ。東雲は自分の願いを叶えるために俺たちをきっと殺す。俺はこいつと今から闘う。」
「そんな・・」
東雲の方針を知った大鳶はショックを受けていた。俺たちを殺そうとしてるのが、同じ生徒会の仲間だという事に。
俺だって、本当は東雲とだって闘いたくない。でも、今日、俺は東雲の覚悟を知った。そして、お互いの道は、けして、交わることのない道ということを。俺は団結の道、東雲は孤独の道を歩むことを決めた。だから、俺たちは闘わなくてはいけない。お互いの守るべき思いと大切な人のために。そして、互いの守りたいという正義のために。
俺と東雲の間にかすかな風が吹く。そして・・
「魔術回路接続!」
東雲は一本のレイピアを召喚する。
「強制転送!」
俺は魔法を唱える。
「強制転送」
この魔法は、織姫がどんな場所にいても、自分のいる場所に召喚することができる魔法だ。
俺は織姫を呼び出す。
「織姫、準備はいいか。」
「はい、昴!」
「形態変形ベガ!」
俺は織姫を魔剣の姿へと変えて、魔剣を両手で構える。そして、俺と東雲は左脚で床を蹴って、お互いの元に走り出した。俺たちの第二ラウンドが始まった。




