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キャリー・ハッピー

「ヤッホー、黒金、東雲。」

伏見が生徒会室に入ってきた。

「遅かったな、伏見。」

俺は伏見に声をかける。

「まあな、お前と違って、ちゃんと、部長さんに生徒会の仕事で部活には行けないことを伝えて来たんだよ。」

「あ、やばい、忘れてた!」

「大丈夫、ちゃんと黒金の分も報告してきたから。」

「サンキュー。」

ニヤリ

俺の言葉を聞いて伏見が突然、不気味な笑みを浮かべる。

「じゃあ、黒金。夢いっぱいイチゴドリームパフェ、奢れよ。」

「ええ〜。」

「そんぐらいいいだろ。ちゃんと休むときは、部長さんに報告しないと、無断欠席扱いになって、とても厳しいペナルティが待ってるってことになるよりマシだろ。」

「あ、うん・・わかったよ。奢らせてもらいます、イチゴばかりパフェ。」

「違う、夢いっぱいイチゴドリームパフェだ!」

「はいはい。」

「ったく、ホントにわかってるんだか。」

話はおわり、俺と伏見は仕事を始める。東雲は相変わらずゲームに夢中になっているかと思えば、耳にイヤホン、左手にマウス、右手にペンを持ち、ゲームをしながら、仕事をしていた。

カチカチ・・

三人は無言で仕事をしている。生徒会室には、マウスでクリックをする音とイヤホンから若干漏れる音しかしない。

「・・・・」

「・・・・」

「なあ、二人とも、天音さんと大鳶はどうしてこんな時間になってもこないんだ?何か知っているか?」

沈黙を破ったのは、伏見だった。

「・・・・」

東雲には聞こえていなかったらしい。無反応だ。

「ああ。知っているぞ。天音さんと大鳶は、種子島中央学園の生徒会と交流会に行っている。だから、今日は二人とも生徒会室にはこない。」

伏見の質問には俺が答えた。

「ふーん、そうか、じゃあ、このメンバーだけか。」

伏見が不気味な笑みを浮かべる。

「伏見、お前、なんか企んでるだろ。」

「かっかっか、当たり!よくわかったな、黒金!」

「うん、まあな。一応、お前の男友達だしな。で、何をするつもりなんだ。」

「・・実は、昨年度の生徒会の予算、私の節約術の成果あって、結構、残ってるんだ・・」

「お前、まさか・・」

「そうだ、黒金のお察しの通り、この予算を会長の監視がない間に使いたいなと思ってさ。」

「それは、やめておけ。学園の金を自分のために使っちゃまずいだろ。」

「ふっふっふ、そんなこと言って、ホントは、使いたいんだろ、予算。」

「う、うーん、まあな・・」

「ほら、やっぱり。まあ、大丈夫

。ばれねえよ。だから、三人で、少し使おうぜ。」

「じゃあ・・」

俺は誘惑に負けた。残り金額は5万円ちょっと。3万円使うことになったので、一人あたり、一万円。

伏見は金庫を開け、お金を取り出す。

東雲はお金を受け取るなり、パソコンをいじり出した。俺が考えるに、ネット注文でもするのだと思う。

それから、二時間少々。

午後7時。一応、今日の仕事のノルマが終わる。俺、伏見、東雲は帰りの支度をする。

「よし、帰るか。」

俺はカバンを持ち、帰ろうとする。が・・

「待て!黒金!」

俺は右手首を伏見に掴まれる。

「何だ、伏見、俺は帰っちゃいけないのか。」

「いや、帰ってはいいんだが。一つ忘れていることがないか?」

「いや、別に。」

「たわけ!」

「あ、頭が・・」

俺はカバンで頭をぶたれる。

「あのな、私にパフェおごるって約束したろ!」

「あ、ああ。でも、今から⁉」

「うん。」

「でも、なんで、今日?」

「今日、パフェが食べたいからだ。」

「ああ、そう・・わかったよ。」

俺は雪乃に


今日は俺の夕飯はいらない。外食してくるから。


というメールを送り、伏見と共に生徒会室を出て、学校を出て、とある店に向かった。

向かった先は、コーヒーショップ「キャリー・ハッピー」。実は、コーヒー好きだったりする俺のお気に入りの店だ。

「よーし、行くか、黒金!戦場へ。」

「別にキャリー・ハッピーは戦場じゃ、ないぞ。」

「いいから、いいから。」

俺は無理矢理、伏見に押される形で、店内に入る。

「お、いらっしゃい。」

マスターの声が聞こえる。

「こんばんは、マスター。」

「こんばんは、レオナルドさん。」

俺と伏見は軽くマスターに挨拶する。

マスターの本名は、レオナルド・フィリップ。ブラジル人だ。でも、日本語はペラペラだったりする。

俺たちは、カウンターの席に座る。

「ふっ、相変わらず、仲のいいカップルなことで。」

「「カップルじゃな〜い!」」

俺たちはマスターの言葉に反論する。

「だってな、いつも一緒に来てれば、カップルだって勘違いするぞ誰だって。」

「伏見と一緒に来るのは、単に友達だからっていう理由だからで。それに今日は伏見に借りがあるから、ここの夢いっぱいイチゴドリームパフェをおごりに来たんだよ。」

「そうか。まあ、わかったさ。昴。まあ、好いてくれる女は大事にしろよ。」

「まあ、言い方が引っかかるが、まあ、大事にするさ。」

「そうしろよ。ところでお二人さん、注文決まったか。」

「あ、うん。伏見のもまとめて注文してもいいか?」

「ああ、頼む。」

俺は伏見に確認し、マスターに注文をする。

「えーと、マスター特製オムライスセット二つ、あと、単品で、夢いっぱいイチゴドリームパフェ一つ、以上だ。」

「セットのドリンクはどうする。」

「マスター特製ブレンドコーヒーと、キャラメルマキアート、両方ホットで。」

「了解。ところで昴。お前、財布の景気良かったりするのか?もしかして、お小遣いもらったばかりだったりするのか?」

「いや、違うけど。なぜそんなことを。」

「いや、オムライスセット二つとパフェをおごる上に自分の分もあって、さらにセットドリンクにしても、200円増しのマスター特製ブレンドコーヒーまで頼むとは。いつも、あまり、高いのは頼まないお前が珍しいとおもってな。何か理由でもあるのか?」

「ちょっと、臨時収入が入ってな。」

「臨時収入?ちょっと気になるなあ。」

「残念ながら、秘密だ、マスター。」

「うーん、そうか。絢ちゃん、なんか知っているか?」

「うーん、知っているけど、私も秘密だ。」

「そうか、残念だ。まあ、いずれ話せるようになったら、話してくれや。」

そう言ってマスターは、作業に取り掛かる。

「なあ、黒金。」

「なんだ?伏見。」

「お前って、いつも、率先して、この席に座るけど、理由でもあるのか?」

「ああ、ある。それはな。」

「それは?」

「マスターが、コーヒーをいれる音や、炊きたてコーヒーの匂いがよく感じることができるんだ。この席。だから、この場所に座るんだ。」

「へえー、深いな。結構。」

「まあな。」

それから、しばらくして、オムライスセットがくる。

俺と伏見はオムライスを一口。

「「うん、うまい。」」

「そう言ってもらえるとは嬉しいねえ。」

そして、オムライスセットをすべて、食べ終え、夢いっぱいイチゴドリームパフェとキャラメルマキアートとマスター特製ブレンドコーヒーがくる。

俺はマスター特製ブレンドコーヒーを一口。

「うん、今日も深い苦味があっていいな。」

「黒金、それ、高校生の言う言葉じゃねえよ。」

「そうか、普通に感想を言っただけだぞ。」

「なんだか、少し、いきがったおっさんみたいだぞ。」

「うーん、そうは思わないけどな。それより、気になったんだけど、なんで、パフェにスプーンが二つ付いてんだ?」

「あ、ホントだ。」

「ふっふっふ、よく気づいたな、二人とも。」

マスターが待っていましたとばかりに笑みを浮かべる。

「レオナルドさん、二つ、スプーンがある意味は?」

「それはな、あるサービスのための条件の下準備だ。」

「「サービス?」」

俺と伏見はマスターに問う。

「二人とも、ここのお得意様だからな。夢いっぱいイチゴドリームパフェ3ヶ月無料券とマスター特製ブレンドコーヒー3ヶ月無料券をあげようというサービスだ。」

「マジか、マスター。」

「マジですか、レオナルドさん。」

「ああ、マジだ。ただし、条件がある。」

「「条件?」」

「それはな、お前たちで、あ〜んって言いながら、それぞれ、パフェを相手の口にいれてあげろというものだ。」

「「なっ!」」

俺と伏見は思ってもいなかった条件に驚く。

「やるのか、やらないのか、早く決めてくれ、お二人さん。」

マスターの言葉を聞き、俺と伏見は顔を合わせる。

「やろうぜ、黒金、あ〜んをさ。」

「えっ⁉」

俺は伏見の意外な言葉に驚く。

「伏見、別にいいじゃないか。無料券を手に入れるために無理しなくても。普通、あ〜んなんて恋人同士じゃない奴同士がやるもんじゃない。」

「べ、別に無理してねえよ・・黒金となら、別に無理とは思わない・・」

伏見はいつもの威勢の声ではなく、イマイチハッキリしない声でそう言った。顔も心なしか少し赤くなっている。

「俺なら、問題ないって。それって・・」

「別に黒金が好きとかそう言うんじゃない。ただ、なんだか、今日、一日中お前のことがなんだか気になるんだ。大鳶をお前が助けたことや、飛鳥とお前が妙に親しいことになんだか、嫉妬している自分がいることに気づいたんだ。だから、この気持ちがなんだかわからないけど、今なら、お前とあ〜んとかしても嫌じゃない気がする。お前さえよければ、レオナルドさんの条件を呑んでもいい。」

「・・・別に俺は構わない。それにこんな空気で断れるわけがないしな。」

「そうか・・じゃあ、あ〜ん。」

伏見はいつもと違う柔らかい表情で、スプーンですくったパフェを俺の口に運んでいく。

「あ、あ〜ん。」

俺もそれに応じる。口に運ばれたパフェはいつもの甘ったるさだけではなく、ほんのり、甘酸っぱさを感じた。

「よし、次は昴からだな。」

マスターが俺を焦らせる。

「伏見、あ〜ん。」

「あ〜ん。」

今度は俺が伏見の口にスプーンですくったパフェを運んだ。

パフェを食べたあとの伏見はなんだか柔らかい表情だった。

「いいもの、見せてもらったぜ。ほら、無料券だ。」

マスターは俺と伏見にパフェとコーヒーの無料券を渡す。

「マスター、でも、なんでこんな条件に?」

俺はマスターに問う。

「それは、秘密だ、昴。それに近いうちに分かるさ。」

「あっそ。」

俺はあえてこれ以上言及しないことにした。その後、伏見がパフェを食べ終えたので、この店をあとにした。





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