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荊の道

その後、授業を一コマ終わらせ、放課後になるが、今日も生徒会の仕事があるので、部活には行けない。

「お邪魔します。」

俺は生徒会室に入る。中には、東雲がいた。

「黒金・・」

「東雲・・」

お互いに何だか気まずそうな視線で相手を見る。しかし、お互いに視線をすぐにそらし、俺は東雲の向かい側の席に座る。

東雲はとある書類を書いていた。

俺は生徒会の目安箱を確認する。

「えっと、ボクシング部のサンドバッグが破損したので、新しいの買って下さい。今年度の部費がまだこないので、金がありません・・か・・これは会計の伏見に回すか・・」

俺は次々に目安箱の案件を解決していく。他の役員はまだこない。

「・・なあ、黒金。」

東雲が話しかけてくる。

「珍しいな、お前から話しかけてくるなんて。」

「・・・ああ、まあな。お前の姿を見るのもあと何回かと思ってな。最後ぐらいはな。」

東雲が昨日始まった闘いで俺が死ぬと思っているのが容易に理解できた。

「俺は死なねえよ。」

「勘違いするな。お前が死ぬという問題じゃない。死ぬかもしれないのは俺の方だ。お前のいう、主催者見つけて辞めさせる道を選んだほうがだれも殺さないで済むし、全員がそれに同意すれば、楽だ。けどな、俺は自分だけが生き残るという誰も仲間のいない荊の道を選んだ。」

「なんでそんな道を・・」

「俺には、どうしても叶えたい願いがあった。」

「叶えたい願い・・?」

「そうだ・・・俺には恋人がいる。その恋人は、半年前、事故にあって、それから、ずっと、目を覚まさないんだ・・このままじゃ・・」

東雲の顔が暗くなる。

「東雲・・・」

「だから、俺は死のリスクを負ってでも、荊の道を突き進む。俺は正直、お前のことが嫌いだ。でも、俺はお前達と過ごした時間は嫌いじゃなかった。だから、お前が死ぬか、俺が死ぬかまでは最後まで、この時間をただ普通に過ごしたい。」

「俺も、お前と過ごした時間、嫌いじゃなかった。お前のことは嫌いだけどな。でも、俺はできればお前を闘いの犠牲にしたくないし、俺自身も犠牲になりたくない。だから、東雲、考えを改めてほしいんだ。」

「・・残念ながらそれは無理な相談だ。あいつを救うには、もう、医学の力では無理らしい。だから、もう、「神話魔術」に頼るしかないんだ。」

「そうか、それがお前の決めた道なんだな。」

「ああ。」

「だったら、せめて、残りの時間くらい仲良くしようぜ。」

「いや、断る。」

東雲はメガネのずれを直して、そう言った。

「東雲・・お前、この話からして、そこは普通、そうだなと言わないか?」

「いや、そんなことはないぞ。はあ〜、何だかしらけちゃったぜ。仕事は中断。ゲームでもするか。」

東雲はノートパソコンを取り出し、電源を入れた。

「よーし。」

東雲はパソコンにディスクを入れる。そして、何やらパスワードらしきものを入力し、ゲームを始めたようだ。

「東雲、お前、何のゲームやってるんだ?」

「教えねえよ。」

「・・・ほうー」

俺は東雲のパソコンを覗き込む。

「はあ〜見られちまったか。」

と言ってる割りには、東雲は平然としていた。

「ダ・カー◯Ⅲ?なんだこれは。俺の知らないゲームだな。」

「何?お前、ダ・カー◯Ⅲを知らないだと。」

「うん、まあな。」

「はあ〜話にならん。この名作を知らんとは。」

「このゲームのジャンルは?」

「ふっふっふ、ギャルゲーだ!」

「ギャ、ギャルゲーだと・・お前、そんなのをやっているのをみたら、恋人さん、悲しむだろうな。」

「う、うるさい!俺はな、さみしいんだよ。彼女は眠ったままで、会話すら出来ないんだぞ。だから、俺はこのゲームでさみしさを紛らわしてるんだ!それに、これ、やってみると意外と深いゲームなんだぞ。」

「へえー。」

「おっ、もしかして、興味持ったのか?黒金。」

「いや、別に。」

「俺にはわかるぞ、黒金。」

「何が?」

「お前の今の感情が。」

「はい?」

「お前は恋人と別れて、もうすぐ、二年。でも、実はその恋人とよりを戻したいと思っている。だから、まずこのゲームで練習したいと。」

「いや、ゲームで練習したいと思ってねえし。けど、何でお前が俺が恋人と二年前に別れたことを知っているんだ。お前、中等部時代この学園の生徒じゃなかったはずなのに。」

「ああ、それはな、今日、昼休みに、二年の教室をうろうろしている女子がいたんでな、目障りだから、声をかけたら、黒金を探してるっていうから、おそらく、お前の知り合いだと、思って色々なお前の弱みを握るために話を聞いたんだが、そしたら、この話が出てきた。」

「そのことをお前に話した奴の名前は?」

「確か・・時崎とか言ってたな。」

「・・・飛鳥か・・東雲、お前、あいつに何かしたのか?」

「パンをおごったら、気前よく話してくれたぜ。」

「ぐっ、なんと・・」

「とにかく、お前もやってみろよ。」

「辞めとく。」

「何故だ。」

「なんとなく。」

「まあ、いい、いずれよさがわかるさ。」

「・・・えーと・・」

俺は東雲の言葉を無視して、仕事を再開するのだった。



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